BLOG
一般内科・症状解説
一般内科・症状解説の記事(110件)
低用量ピルとトラネキサム酸併用で血栓症リスクは本当に上がるのか ―「過度に心配する必要はない」と言える根拠を整理する―
低用量ピル(OC/LEP)を内服中の方が、月経過多や肝斑治療などの目的で**トラネキサム酸(TXA)**を併用してよいのか、という相談は少なくありません。 とくに「血栓症リスクが重なるのではないか」という点がよく問題になります。 結論から言うと、現時点のエビデンスを総合すると、適切な患者選択と短期・適正使用であれば、併用を過度に恐れる必要はない、という整理が妥当です。 まず大前提:理論的懸念と臨床
帯状疱疹の治療薬と腎障害 ― 腎機能が低下している方は何に注意すべきか ―
帯状疱疹(Herpes zoster)は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって起こる疾患です。 治療の基本は抗ウイルス薬の早期投与ですが、これらの薬剤は腎機能の影響を強く受けるという重要な特徴があります。 特に高齢者では、自覚のない腎機能低下を合併していることも多く、薬剤選択や用量調整を誤ると副作用リスクが高まります。 この記事では、帯状疱疹治療薬と腎障害の関係について、実臨床ベース
腕に「帯状の赤みと腫れ」が出たときに考える病気
腕の皮膚に、帯状(横方向・線状)の赤みや腫れが急に現れることがあります。いわゆる「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」として知られる細菌感染でみられる症状ですが、同じような見た目を示す他の病気もあり、原因によって対処が変わります。 今回は、医学的に根拠が確認されている範囲で、帯状の発赤が腕に出たときの主な鑑別疾患と考え方をまとめます。 蜂窩織炎(細菌による皮膚の炎症) 蜂窩織炎は、皮膚の浅い部分から皮下組
日本の年末年始の医療体制と備え(総説)
年末年始に医療体制が変化する理由 日本では、12月29日頃から1月3日頃まで多くの医療機関が休診となり、外来機能が一時的に低下します。 そのため、患者の受診先が限られ、救急医療機関・当番医に負荷が集中する構造が毎年みられます。 厚生労働省および各自治体は、これを「特定期間の医療提供体制」として整理しており、休日期間中は 自治体が指定する休日当番医 救急告示病院(ER機能) 小児救急拠点病院 夜間急
犬に咬まれたときの「破傷風」は大丈夫?
トキソイド・テタノブリンの適応と、最近の在庫不足についてわかりやすく解説します 犬に咬まれたとき、多くの方が心配されるのは「傷口の感染」や「狂犬病」ですが、実は破傷風(はしょうふう)のリスク評価もとても重要です。 破傷風菌は土壌などに広く存在し、傷口から体内に入ることで発症します。日本での発生数は多くありませんが、重症化することがあり、けがをした時点での適切な予防が大切です。 この記事では、一般の
低用量ピルでLDLコレステロールは上がる? 医師が最新エビデンスでわかりやすく解説
低用量ピル(経口避妊薬)は避妊だけでなく、月経痛の軽減やPMS改善の目的でも広く使われています。 その一方で「ピルを飲むとLDLコレステロール(いわゆる悪玉)が上がるのでは?」という質問をたまに受けます。 結論として、 低用量ピルの内服中にLDLが上昇することはありうる というのが医学的にも妥当な説明です。 ただし、多くは軽度で、変化が全くない方も多く、上がるかどうかは個人差があります。 ここから
若者の自然気胸について総論 (10〜30代に多い“突然の胸痛と息苦しさ”の正体)
自然気胸は、突然「胸が痛い」「息がしづらい」といった症状で始まることが多く、特に 10〜30代のやせ型の男性 にしばしばみられます。 肺の一部が破れて空気が胸腔に漏れ出し、肺がしぼんでしまう状態です。 1. 自然気胸とは何か 日本呼吸器学会の定義では、外傷や医療処置を伴わずに肺が破れて起こる気胸を「自然気胸」と呼びます。 そのうち明らかな基礎疾患がないものを 特発性自然気胸(primary spo
若者の低血糖症状について徹底解説(2025年版)
1. 低血糖ってそもそも何? 低血糖とは、「血液中のブドウ糖(血糖)が下がりすぎた状態」を指します。 日本では明確な数値の決め方は疾患や状況で少し異なりますが、 糖尿病治療中の文脈では 「血糖値が 70mg/dL 未満になった状態」を低血糖とする教科書・ガイドが多く、 海外のガイドライン(米国糖尿病学会など)でも、 レベル1低血糖:70mg/dL未満54mg/dL以上 レベル2低血糖:54
片頭痛の薬「トリプタン系」の副作用をわかりやすく解説
片頭痛の発作に使われる「トリプタン」という薬があります。 スマトリプタン(イミグラン)、リザトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、アルモトリプタン、ナラトリプタンなど、現在日本では複数の薬が使えます。 即効性があり、片頭痛治療の中心になる薬ですが、 「胸が締めつけられる感じがした」 「飲んだらめまいがあった」 といった相談も多く、初めて使う方は不安になることがあると思います。 今回は 日本
左軸偏位とは?心電図で指摘されたときに確認すべきポイント
心電図の「左軸偏位(Left Axis Deviation:LAD)」は、心室の電気刺激が進む方向(QRS軸)が −30°以下〜 −90°の範囲に偏っている状態を指します。 これは「病名」ではなく、あくまで心電図の電気的所見です。 日本循環器学会の心電図の標準的解説でも、QRS軸 ・−30°〜 −90°:左軸偏位 と定義されています。 心電図で左軸偏位を指摘されたからといって、直ちに特定疾患が決ま
悪性黒色腫(メラノーマ)の治療法:最新エビデンスによる総論(2025年版)
悪性黒色腫(メラノーマ)は皮膚がんの中でも特に「進行スピードが早いタイプ」とされ、早期から適切な治療を行うことが重要です。近年は免疫チェックポイント阻害薬を中心に治療成績が大きく改善しており、日本でも国際標準に沿った治療が行われています。 この記事では、日本で推奨されている治療の全体像を、最新エビデンスに基づいてまとめます。 1. まず最優先となる治療:外科的切除(根治を目指す治療) 日本では「完
吐き気止めはどれが安全? プリンペラン・ナウゼリン・その他の薬の違いをわかりやすく解説します
吐き気や胸のムカムカがあるとき、病院でよく処方されるのが「制吐剤(せいとざい)」です。 特に多いのが ・プリンペラン(メトクロプラミド) ・ナウゼリン(ドンペリドン) の2つですが、「どっちが安全?」「妊娠中は使えるの?」という質問をよくいただきます。 今日は、医師として事実だけを整理し、わかりやすく解説します。 1. 代表的な吐き気止めとその特徴 制吐剤はいくつか種類がありますが、日常診療でよく
抗ヒスタミン薬の「塗り薬」ってどんな薬?
限局したかゆみに使われる外用薬の基本 皮膚が急にかゆくなると、まず「塗り薬で何とかならないかな」と考える方は多いと思います。 今回は、かゆみ止めとして使われる**抗ヒスタミン薬の外用剤(塗り薬)**について、医学的な根拠に沿って整理します。 抗ヒスタミン薬の外用剤とは? 外用抗ヒスタミン薬は、皮膚に塗って使うヒスタミンH1受容体拮抗薬です。 主に、 虫刺され 蕁麻疹様の赤み 軽度の接触皮膚炎による
成人の水痘(VZV初感染)は本当に「ひどい水疱」が出るのか
日本の感染症関連ガイドラインでは、成人の水痘は 水疱が密に多発 紅斑・丘疹・水疱・痂皮が混在 発熱や倦怠感がしばしばみられる という比較的“重い”経過をとることが知られています。 そのため、少数の散在性水疱のみの成人水痘は非典型で、鑑別順位は下がります。 ワクチン既接種者や不顕性感染歴がある場合に軽症化することはありますが、それでも水疱は“もう少し密に”出ることが多いとされています。 今回のような
神経症とは何か 現代医学にもとづく総説(2025年版)
神経症という言葉は歴史的には広く使われてきましたが、現在の医学では正式な病名としては用いられません。 しかし一般向けの表現としては今も使われ、患者さん自身が「神経症では?」と相談することは少なくありません。 この記事では、現代の診断基準に照らして「神経症」という語をどのように解釈すべきかを、最新の医学的エビデンスに基づいて整理します。 1. 神経症という言葉の成り立ち 神経症(neurosis)は
口唇ヘルペスの初感染ってどれくらい激しい?
日本のガイドラインにもとづく正確な症状まとめ(2025年版) 口唇ヘルペスは非常によくみられる感染症ですが、 「初感染(初めてかかった時)」はどれくらい強い症状が出るのか? という点は検索でも迷いやすく、医療機関でも質問が多いところです。 結論から言うと、 日本のガイドラインでは「初感染の方が症状は強く出ることが多い」 と整理されています。 ここでは、日本のエビデンスを中心に“初感染の症状が何を指
去痰剤ムコダインとムコソルバン そのほかの去痰薬の違いと使い分けを「医学的エビデンス」で徹底解説
咳や痰の症状は、風邪・気管支炎・副鼻腔炎・COPD など幅広い疾患でみられます。 その際によく処方されるのが 去痰薬(喀痰調整薬) です。 本記事では、 ムコダイン(L-カルボシステイン) ムコソルバン(アンブロキソール) そのほかの主要な去痰薬(エンピナース、ブロムへキシン、NAC など) について、科学的根拠に基づいて“明確に”違いを整理します。 医学的にどのように使い分けるのが妥当か、一次情
喘息吸入薬って苦い?
LABA/ICS(長時間作用型β2刺激薬+吸入ステロイド)の吸入薬は、薬効に差があるだけでなく、「味」や「口に残る感じ」にも特徴があります。 実際、継続できない理由として「苦味」が意外と多く、日本のガイドライン(喘息予防・管理ガイドライン)でも吸入アドヒアランスの重要性が強調されています。 この記事では、**国内で使えるLABA/ICSの中で“苦味の訴えが少ないもの”**を、添付文書の味覚関連副作
妊娠中・授乳中の喘息吸入薬の適応について総説
結論から言うと、日本・海外のガイドラインは共通して 喘息コントロール不良そのものの方が、母体・胎児へのリスクが大きい 吸入薬は妊娠中・授乳中でも原則として継続する という立場です。サイエンスダイレクト+3日本産婦人科医会+3臨床支援アプリHOKUTO+3 ここでは「妊娠・授乳中の喘息吸入薬」について、 日本のガイドラインを中心に、海外の方針も補足しながら整理します。 1. 妊娠中の喘息で本当に問題
妊娠中・授乳中の「頑固な咳」 咳喘息への LABA/ICS 使用は可能か? 最新の国内外ガイドラインから整理
1. 今いちばん多い相談は「咳だけ止まらない」 外来で非常に多いのが、 新型コロナ後の長引く咳 後鼻漏が治っても続く咳 風邪後 3週間以上続く咳 深夜や朝方にだけ出る咳 痰が出ないのに咳ばかり続く こうした「咳が主体」で来院する方で、もともと喘息歴がないケースは多いです。 医学的には 咳喘息(Cough-variant asthma) や 気道過敏性亢進 を疑う病態。 そしてここで最も多い質問が
NHK福岡「ロクいち!福岡」に出演しました
2025年10月11日放送の NHK福岡『ロクいち!福岡』(18:10〜) にて、 当院・ひろつ内科クリニック院長 廣津こう平 が 「寒暖差による体調不良とその対策」についてコメント出演いたしました。 寒暖差による体調不良とは? 朝晩と日中の気温差が大きくなるこの時期、 「だるい」「眠れない」「食欲が出ない」「めまいがする」 といった訴えで来院される方が増えています。 これは、体温調整を担う 自律
「トイレが近い…」それ、過活動膀胱かもしれません
「急にトイレに行きたくなって我慢できない」「夜中に何度も起きる」―― そんな症状が続くと、日常生活が大きく制限されてしまいます。 このような症状があるときに考えられるのが、**過活動膀胱(かかつどうぼうこう)**です。 40歳以上の日本人では、およそ8人に1人が悩んでいるといわれています。 1. 過活動膀胱とは? 過活動膀胱とは、膀胱(ぼうこう)の働きが過敏になり、急に尿意が強く出てしまう状態のこ
単純性紫斑病とは?―皮膚にあざができやすい人の原因と対処法―
皮膚に赤紫色のあざができやすく、「ぶつけた覚えがないのに青あざができる」という方はいませんか? このような症状で最も多いのが**単純性紫斑病(たんじゅんせいしはんびょう)**です。高齢者だけでなく、若い女性にもみられることがあり、原因や対処法を正しく理解することが大切です。 単純性紫斑病とは? 単純性紫斑病(simple purpura, senile purpura)は、皮下出血によって皮膚に紫
痛風発作とは?― 尿酸の炎症反応を科学的に理解する
痛風発作のメカニズム 痛風は、尿酸ナトリウム結晶が関節内に沈着し、急性の無菌性炎症を引き起こす疾患です。 結晶がマクロファージに取り込まれると、NLRP3インフラマソームが活性化し、IL-1βが放出され、好中球浸潤によって激しい疼痛と腫脹を生じます。 典型的には**母趾MTP関節(足の親指の付け根)**に発作が起こります。 痛風発作の誘因 飲酒(特にビール・焼酎などプリン体含有が多いもの) 脱水(