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授乳中に嘔吐・下痢になったら——授乳は続けていい?赤ちゃんへの感染対策と薬の考え方を内科医が解説

授乳中に、突然の吐き気と下痢。つらいのはもちろんですが、それ以上に心配になるのが「赤ちゃんにうつってしまわないか」「母乳をあげ続けていいのか」ではないでしょうか。ぐったりしていても、赤ちゃんのお世話は待ってくれません。

この記事では、授乳中のお母さんが嘔吐・下痢(感染性胃腸炎)になったときに、実際にできることを整理します。

結論:多くの場合、授乳は続けて大丈夫です

ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎では、ウイルスが母乳の中に入って赤ちゃんにうつる、ということは基本的にありません。そのため、お母さんが胃腸炎になっても、授乳を中断する必要は通常ありません。

むしろ母乳には、お母さんが今戦っている病原体に対する抗体などが含まれます。授乳を続けることは、赤ちゃんにとって不利にはならないと考えられています。

「うつしてしまうから」と自己判断で断乳・中断してしまうと、母乳の分泌が減ったり、乳腺炎につながったりすることもあります。まずは落ち着いて、次の感染対策を優先してください。

赤ちゃんにうつるのは「手・吐物・便」から

胃腸炎がうつる主な経路は、母乳ではなく、手や物を介した接触です。ここを断つのが本丸です。

  • トイレのあと、吐いたあと、おむつ替えのあとは、流水と石けんで手を洗う(ノロウイルスにはアルコール消毒が効きにくいとされます。可能なときは石けんと流水を優先してください)
  • 授乳や抱っこの前にも手を洗う。乳頭を特別に消毒する必要はありません
  • 吐物や便の処理は、使い捨て手袋とマスクを使い、処理後はしっかり手洗い。汚れた場所は塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を薄めたもので拭き取ります
  • タオル、食器、洗面用具は分ける
  • 咳や吐き気があるときは、赤ちゃんに顔を近づけすぎない。可能ならマスクを

「母乳をやめること」より、「手を洗うこと」のほうが、赤ちゃんを守る効果ははるかに大きいと考えてください。

お母さん自身の脱水を防ぐ——授乳中はとくに大切

授乳中は、母乳として毎日かなりの水分が出ていきます。そこへ嘔吐・下痢が加わると、普段より脱水になりやすい状態です。

  • 水やお茶だけでなく、塩分(ナトリウム)も一緒に補える経口補水液が役立ちます
  • 一度にたくさん飲むと吐きやすいため、少量を5〜10分おきに、こまめに
  • 吐き気が強い時間帯は無理をせず、落ち着いたタイミングで少しずつ
  • 脱水になると母乳の量が一時的に減ることがありますが、水分がとれるようになれば戻っていくことが多いです

経口補水液の飲み方は、当院の関連記事でも解説しています。

食事は「食べられるものから」で大丈夫

「母乳のためにしっかり食べなければ」と思いがちですが、吐き気が強いときに無理は禁物です。

  • おかゆ、うどん、スープ、ゼリー、バナナなど、消化にやさしいものから
  • 脂っこいもの、香辛料、乳製品、アルコールは症状が落ち着くまで控える
  • 食欲が戻るまでは、まず水分の確保を優先

薬の考え方——自己判断で飲まないこと

ここが最も注意していただきたい点です。

  • 手持ちの薬や市販薬を自己判断で飲まないでください。授乳中は、薬によって赤ちゃんへの影響の考え方が異なります
  • 受診の際は、必ず「授乳中です」と伝えてください。それだけで選ぶ薬が変わります
  • 下痢止めは、感染性胃腸炎では原則として使いません。ウイルスや細菌の排出を遅らせてしまう可能性があるためです
  • 吐き気止めも、自己判断での使用は避けてください。必要かどうかは医師が判断します。薬によっては添付文書上「授乳を避ける」と記載されているものもあり、可否や代替は個別の判断になります
  • 整腸剤など、授乳中でも比較的使いやすい薬もあります
  • 授乳中の薬については、国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」が情報を公開しており、参考になります

「授乳中だから薬は一切飲めない」ということはありません。逆に「大丈夫だろう」と自己判断するのも避けたいところです。医療機関で相談するのが、いちばん安全で早い方法です。

一時的に授乳を控える必要がある場合

ごく一部ですが、使用する薬の種類によっては、一時的に授乳を控える判断がされることがあります。その場合も、多くは短期間です。

  • 医師から「この間は授乳を控えて」と言われた場合は、搾乳して母乳の分泌を保つと、再開しやすくなります
  • 分泌が減ってしまわないか不安なときは、遠慮なくご相談ください

受診の目安(お母さん)

次のような場合は、我慢せず受診してください。点滴での水分補給が必要なこともあります。

  • 水分がとれない、飲んでも吐いてしまう
  • ぐったりする、立ちくらみがある、半日以上尿が出ていない
  • 血の混じった下痢、強い腹痛、高熱が続く
  • 症状が数日たっても改善しない
  • 授乳量が急に減った、乳房が痛い・熱をもっている(乳腺炎の可能性)

「小さい子がいるから受診できない」と我慢される方が多いのですが、お母さんが倒れてしまうほうが困ります。事情をお伝えいただければ、できる範囲で配慮します。

赤ちゃんに症状が出たときは

赤ちゃんに嘔吐や下痢が出た場合は、小児科を受診してください。乳児は大人より脱水が進みやすく、注意が必要です。

  • 母乳は続けて構いません(少量ずつ、回数を分けて)
  • おしっこが半日以上出ない、ぐったりして反応が鈍い、機嫌が極端に悪い、けいれん、といったときは急いで受診を

ひとりで抱えないでください

胃腸炎の間は、体を休めることが回復への近道です。可能であれば、家族に赤ちゃんのお世話を一部代わってもらう、家事を減らす、ミルクを一時的に併用するなど、無理をしない選択も検討してください。

まとめ

  • ノロウイルスなどの胃腸炎では、母乳を介して赤ちゃんにうつるわけではなく、多くの場合、授乳は続けられます
  • 大切なのは手洗い(石けんと流水)と、吐物・便の処理、タオルや食器を分けることです
  • 授乳中は脱水になりやすいため、経口補水液を少量ずつこまめに
  • 薬は自己判断で飲まず、必ず「授乳中」と伝えて相談を。下痢止めは原則使いません
  • 水分がとれない、尿が出ない、血便、乳房の痛みなどがあれば早めに受診してください

参考文献

  • 国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」授乳と薬に関する情報
  • 厚生労働省 ノロウイルスに関するQ&A
  • 国立健康危機管理研究機構(感染症情報)感染性胃腸炎に関する情報

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https://wakumy.lyd.inc/clinic/hg08874

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