秋冬に悪化しやすいぜん息——寒暖差やかぜなどのきっかけ、発作のサイン、症状がなくても続ける毎日の吸入とうがい、ワクチン、救急車を呼ぶ目安を内科医が解説
朝晩がぐっと冷え込み、日によって気温が大きく変わる季節になりました。ぜん息(気管支ぜん息)のある方にとって、秋から冬は注意したい時期です。環境再生保全機構は、ぜん息の発作は1年のうち5月から7月と10月から11月に回数・程度ともに多くなり、秋のほうが若干多い傾向があると解説しています。
この記事では、秋冬にぜん息が悪くなりやすいきっかけ、発作のサイン、症状がなくても毎日の吸入を続ける大切さ、吸入後のうがい、かぜやインフルエンザへの備え、そして受診や救急車を呼ぶ目安を、学会や公的機関の資料にもとづいてまとめます。
ぜん息とは——症状がなくても気道の炎症は続いています
ぜん息は、気道(空気の通り道)に慢性のアレルギー性の炎症が起こり、さまざまなきっかけで気道が狭くなって呼吸が苦しくなる病気です。くり返す咳(せき)、「ゼーゼー、ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難が主な症状です。
大切なのは、症状がないときでも、気道にはアレルギー性の炎症が残っているという点です。炎症をしずめる治療をしないままでいると、発作を何度もくり返してしまいます。発作が強くなると気道がふさがり、窒息して命を落とすこともあります。
また、治療が不十分なまま炎症が続くと、気管支が硬くなる「気道リモデリング」が進み、元の状態に戻りにくくなると考えられています。
秋冬にぜん息が悪くなりやすいきっかけ
ぜん息の気道は、炎症のために刺激に敏感になっています。そのため、ふだんなら何でもない刺激でも発作のきっかけになります。秋から冬に重なりやすいのは、次のようなものです。
- 気温の低下と寒暖差:季節の変わり目など、前日より気温が下がるときに急に悪化することがあります。10月から11月は1日の温度差も大きくなり、かぜをひきやすくなります。
- かぜ・インフルエンザなどの呼吸器感染症:ぜん息を悪化させる大きな要因です。空気が乾燥しがちな冬はとくに注意しましょう。
- ダニなどの室内アレルゲン:室内のダニなどのアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)の量は、春と秋がピークとされています。
- 冷たい空気の中での運動:運動したときに発作が起こる「運動誘発ぜん息」は、乾燥した空気を吸い込むことで起こり、空気の冷たい冬に起こりやすいとされています。
- 煙や強いにおい:たばこ、線香、花火などの煙や強いにおいの刺激でも、急に悪化することがあります。
このほか、台風などで気象条件が大きく変わるときや、疲れがたまっているときも悪化しやすいとされています。また、ぜん息の症状は夜間や早朝に起こりやすいのも特徴です。
毎年同じ季節に悪くなる方は、その時期に合った治療を主治医と相談しておくとよいでしょう。
発作のサインと、苦しさの程度の見分け方
次のような変化は、ぜん息が悪くなっているサインです。
- 咳がくり返し出る(とくに夜中や明け方)
- 息をするとき「ゼーゼー、ヒューヒュー」と音がする
- 胸が苦しい、息苦しい
発作のときの苦しさは、次の3段階で見分けます。
- 苦しいが横になれる:軽度(小発作)
- 苦しくて横になれない:中等度(中発作)
- 苦しくて動けない:高度(大発作)
咳などの軽い症状でもしばしば出て、発作止めの薬を使ったり、日常生活に支障が出たりしている状態は「コントロールが不十分」と考えられます。夜間や早朝に発作が出るのも、病状が不安定になっているサインです。このような変化があれば、主治医に伝えてください。
症状がなくても続ける毎日の吸入と、吸入後のうがい
ぜん息の薬は、大きく2つに分かれます。
- 発作止めの薬(発作治療薬):狭くなった気道を広げる即効性の薬です。苦しい呼吸は一時的によくなりますが、気道の炎症を抑えることはできません。
- 長期管理薬:気道のアレルギー性の炎症をしずめる薬です。症状がないときにも続けて使うことで、発作が起きにくくなります。中心となるのは吸入ステロイド薬です。
成人のぜん息の長期管理は、重症度に応じて4つの段階(治療ステップ)に分けて進められます。治療の基本は「発作が起きたら治療する」ではなく、「発作を起こさないようにコントロールする」ことです。症状のない生活を送れているのは、ぜん息が治ったからではなく、うまくコントロールされているからです。
そのため、発作がなくなったからといって、自分の判断で長期管理薬をやめてはいけません。薬を減らすか、やめるかは、医師が症状やピークフロー、呼吸機能の検査などをもとに判断します。薬を減らしたりやめたりできた後でも、かぜなどの呼吸器感染症をきっかけに症状が再び出ることがあります。
吸入ステロイド薬は、薬を粉や霧の状態にして炎症のある気道に直接届けるため、全身性の副作用はほとんどないとされています。副作用が心配な方も、自己判断で中断せず、まず医師に相談してください。
吸入のあとは、うがいを忘れずに
吸入ステロイド薬を使ったあとは、必ずうがいをしましょう。口の中に薬が残ると、カンジダというカビの一種が増えることがあるためです。人によっては声がれが出ることもありますが、その場合も吸入をあきらめず医師に相談すると、薬の種類を変えて対処できる場合が多くあります。
うがいを忘れないための工夫として、次のような方法が紹介されています。
- 毎日決まった時間に吸入する
- 歯みがきの前に吸入する
- 食事の前に吸入して、食後に歯みがきやうがいをする
また、吸入薬は正しく吸い込めて初めて効果が得られます。吸入のしかたは、定期的に医師や看護師、薬剤師にチェックしてもらいましょう。
かぜ・インフルエンザへの備えとワクチン
環境再生保全機構は、呼吸器感染症への対策として次のことを挙げています。
- 外に出るときはマスクをする
- 外から帰ったら、うがいと手洗いをする
- 毎年、インフルエンザの流行前に予防接種を受ける
- 65歳以上の方は、肺炎球菌ワクチンの接種を受ける
喫煙は呼吸機能を低下させ、吸入ステロイド薬の効きも悪くします。他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙も、自分が吸うのと同じくらいぜん息を悪化させる要因です。室内のダニ対策としては、こまめに丁寧に掃除機をかけること、布団を干したり布団乾燥機を使ったりすることが基本とされています。
かぜの季節に気をつけたいのが、解熱鎮痛薬です。成人のぜん息の方の約5〜10%では、解熱鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬)で重いぜん息発作が起こることがあります。市販の解熱鎮痛剤にも使われているため、注意が必要です。ほかの病気で医療機関(歯科を含む)や薬局にかかるときは、ぜん息があることを必ず伝えてください。
ワクチンの接種時期や体調に合わせた注意点は、医療機関でご相談ください。
受診の目安と、すぐに救急車を呼ぶサイン
苦しくなったときにどうするか(使う薬と使い方、受診のタイミングなど)は、ふだんから主治医と相談して決めておきましょう。これを書面にしたものを「アクションプラン(行動計画)」といいます。
次のような場合は、ためらわずに医療機関を受診してください。
- 苦しくて眠れない
- 発作止めの薬を使っても効果が不十分
- 発作止めの薬が手元にない
- 苦しくて横になれない状態が、発作止めの薬を使っても改善しない(救急外来を受診)
ぜん息と診断されていなくても、運動すると咳きこむ、かぜをひくたびに咳が長引くといった場合は、ぜん息の可能性があります。鼻副鼻腔炎や胃食道逆流など、ほかの病気でも咳が長引くことがあるため、内科でご相談ください。
次のようなときは、すぐに119番に電話して救急車を呼んでください。
- 苦しくて動けない
- 唇や指先が青白くなっている(チアノーゼ)
- 呼吸が弱くなっている
- 意識がおかしい、もうろうとしている、または過度に興奮している
- 急な息切れ、呼吸困難が強い
小さなお子さん(乳幼児)では、苦しくて話せない、歩けない、唇や爪の色が白っぽい、顔などの皮膚や粘膜が青紫色になる、ボーッとしている、胸の骨の上や鎖骨の上がくぼむ、横になれない・眠れない、呼びかけに反応しない・ぐったりしている、といった様子が強い発作のサインです。いずれかのサインがあれば、すぐに受診してください。
なかでも、くちびるの色が紫色になっている、激しい咳やゼーゼーで呼吸が苦しそう、呼吸が弱い、意識がない・おかしい(もうろうとしている)といったときは、お子さんでもすぐに119番に電話してください。受診するか迷うときは、子ども医療電話相談「#8000」も利用できます。
救急車を呼ぶべきか迷うときは、救急相談窓口の「#7119」(福岡県も実施しています)に相談できます。消防庁の全国版救急受診アプリ「Q助」も、症状を画面で選ぶと緊急度に応じた対応を案内してくれます。
参考文献
- 日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン2024」(2024年)
- 日本アレルギー学会「アレルギーポータル 成人のぜん息」(厚生労働省補助事業・2026年4月3日更新)
- 日本アレルギー学会「成人のぜん息/Q&A」
- 環境再生保全機構「ぜん息などの情報館 成人ぜん息」(日常生活におけるぜん息悪化の要因・日常生活の改善・発作が起こったら…・成人ぜん息Q&A)
- 消防庁「救急車を上手に使いましょう~救急車 必要なのはどんなとき?~」(令和7年12月発行)
当院のページ「診療内容」(内科で診ている主な病気・症状)
https://hirotsu.clinic/services/
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