健診でAST・LDHが高い?それ、筋肉が原因かもしれません|運動後の採血値を内科医が解説
健診でAST・LDHが高いと言われたら
健康診断の結果で「AST(GOT)が高い」「LDHが高い」と指摘されると、多くの方は「肝臓が悪いのかな」と心配されます。
確かにAST・LDHは肝機能の指標としてよく知られていますが、実はこれらの酵素は肝臓だけでなく筋肉にも大量に含まれています。つまり、筋肉が壊れた(筋破壊が起きた)場合にも数値が上昇するのです。
この記事では、運動による筋破壊とAST・LDH上昇の関係について、内科医の立場から解説します。
AST・LDHはどこに含まれているのか
まず基本的な知識として、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とLDH(乳酸脱水素酵素)が体のどこに存在するかを整理します。
- AST:肝臓、心臓、骨格筋、腎臓、赤血球など
- LDH:ほぼ全身の細胞(肝臓、心臓、骨格筋、肺、腎臓、赤血球など)
つまり、AST・LDHが上がったからといって「肝臓が悪い」とは限りません。これらの酵素は細胞が壊れると血液中に流れ出すため、筋肉の細胞が壊れた場合にも同じように上昇します。
筋トレやジョギングでAST・LDHが上がる仕組み
激しい運動を行うと、筋肉の線維に微細な損傷が生じます。これは「筋肉痛」の原因でもあり、運動をしている方なら誰にでも起きる生理的な現象です。
筋線維が損傷すると、細胞の中にあったAST・LDH・CK(クレアチンキナーゼ)などの酵素が血液中に漏れ出します。その結果、採血をすると数値が上昇して見えるわけです。
特に以下のような場合に数値が上がりやすくなります。
- 筋トレ(特にスクワット・デッドリフトなどの高強度トレーニング)
- ジョギング・マラソン(長距離の場合は顕著に上昇)
- 久しぶりの運動(普段使わない筋肉を急に使った場合)
- エキセントリック運動(筋肉を伸ばしながら力を入れる動作。階段の下りなど)
フルマラソン後のランナーでは、AST・LDH・CKのいずれもが基準値の数倍〜数十倍に上昇することが知られています。これ自体は正常な反応であり、通常は数日〜1週間で元に戻ります。
肝臓が原因か、筋肉が原因か――見分け方
健診でAST・LDHが高い場合、それが肝臓由来なのか筋肉由来なのかを見分ける方法があります。
ALT(GPT)をチェックする
ASTと一緒に検査されるALT(GPT)は、ほぼ肝臓にしか存在しません。
- AST↑・ALT↑ → 肝臓が原因の可能性が高い
- AST↑・ALT正常 → 筋肉が原因の可能性が高い
これが最も簡単な見分け方です。AST だけが高くてALTが正常範囲内であれば、まず筋肉由来を疑います。
CK(CPK)を追加検査する
CK(クレアチンキナーゼ)は筋肉に特異性が高い酵素です。CKが高ければ、AST・LDHの上昇も筋肉由来である可能性がさらに高まります。
LDHアイソザイム
LDHにはいくつかの「型」があり、どの臓器由来かを調べることができます。筋肉由来の場合はLDH4・LDH5が上昇する傾向があります。ただし、この検査は日常的に行うものではなく、鑑別が必要な場合に実施します。
こんな方は特に注意
運動による一時的なAST・LDH上昇は基本的に問題ありませんが、以下の場合は医療機関を受診してください。
- 運動していないのにAST・LDHが高い
- ALTも一緒に高い(肝臓の問題の可能性)
- 数値が極端に高い(ASTが500 U/L以上など)
- 筋肉痛がひどい・尿が茶色っぽい(横紋筋融解症の可能性)
- 倦怠感・食欲不振・黄疸(肝炎の可能性)
- 繰り返し指摘される(慢性的な異常の可能性)
特に尿が赤褐色〜コーラ色になっている場合は横紋筋融解症の可能性があり、急性腎障害に至るリスクがあるため、すぐに医療機関を受診してください。
健診前の注意点
健康診断の採血でAST・LDHが正確に出るようにするためのポイントです。
- 健診前日〜当日は激しい運動を避ける(筋トレ、ランニング、長時間の自転車など)
- 前日の夜に軽いストレッチ程度は問題ない
- 運動習慣がある方は、健診の2〜3日前から高強度トレーニングを控える
過去に「AST・LDHが高い」と指摘されたことがある方で、日常的に運動をされている方は、次回の健診前に運動を控えてみてください。それだけで数値が正常化することも少なくありません。
薬剤による筋障害にも注意
運動以外にも、筋肉が壊れてAST・LDH・CKが上がる原因があります。代表的なのがスタチン系薬剤(コレステロールを下げる薬)です。
スタチンの副作用として横紋筋融解症が知られており、服用中の方が健診でAST・LDHの上昇を指摘された場合は、主治医に相談してください。
まとめ
- AST・LDHは肝臓だけでなく筋肉にも多く含まれる
- 筋トレ・ジョギング・マラソンなどの運動後に数値が上がるのは正常な反応
- AST↑・ALT正常 → 筋肉由来の可能性が高い
- 健診前は激しい運動を避けるのがベスト
- 運動していないのに高い場合や、ALTも高い場合は医療機関を受診
当院での対応
ひろつ内科クリニックでは、健康診断の結果についてのご相談を承っております。AST・LDH・CKなどの再検査を行い、肝臓由来か筋肉由来かを鑑別いたします。
「健診で引っかかったけど、運動のせいかもしれない」「肝臓が本当に大丈夫か確認したい」という方は、お気軽にご相談ください。
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