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採血で「ASOが高い」と言われたら——溶連菌の抗体検査(抗ストレプトリジンO)の正しい読み方を内科医が解説

「ASOが高い」と言われて不安な方へ

採血の結果で「ASO(エーエスオー)が高い」と言われ、心配になって調べている方は多いと思います。まず知っておいていただきたいのは、ASOが高い=今すぐ治療が必要、ということではないという点です。

ASOは読み解きが少し難しい検査で、1回の数値だけで「溶連菌に感染している」「何か大変な病気だ」と判断するものではありません。この記事では、ASOが何を見ている検査なのか、なぜ高くても慌てなくてよいことが多いのかを、内科医の視点でやさしく解説します。

ASOとは何を見ている検査?

ASOは正式には「抗ストレプトリジンO(こうストレプトリジンオー)」という抗体の検査です。

  • 溶連菌(ようれんきん/A群溶血性レンサ球菌)という細菌が出す「ストレプトリジンO」という毒素に対して、体が作る抗体の量を測っています
  • つまりASOは、「過去に溶連菌に感染したことがあるか」を反映する検査です
  • 溶連菌はのどの感染(溶連菌性の咽頭炎・扁桃炎)でおなじみの細菌です

ここがいちばん大事なポイントですが、ASOは「今まさに溶連菌に感染しているか」を判定する検査ではありません。あくまで「以前にかかった痕跡(抗体)」を見ているものです。

「今ののどの感染」を調べる検査ではない

「のどが痛い、熱がある」というときに、溶連菌が原因かどうかを調べるのは、ASOではなくのどの迅速検査(溶連菌抗原検査)や培養です。これらはその場でのどにいる菌を直接調べます。

  • 今の溶連菌感染を知りたい → のどの迅速抗原検査・培養
  • 過去に溶連菌に感染した痕跡を知りたい → ASO(抗体検査)

ですから、急なのどの痛みの原因を調べる目的でASOだけを測っても、本来の用途とは合いません。

ASOは「上がって、下がる」のに数か月かかる

ASOには独特の時間的な動きがあります。

  • 溶連菌に感染してから1〜3週間ほどで上がり始める
  • 3〜5週間後にピークになる
  • その後、数か月(半年〜1年)かけてゆっくり下がっていく

このため、1回の採血で「高い」と出ても、それが

  1. 最近の感染で上がっている途中なのか
  2. 少し前の感染の名残で、下がりきっていないだけなのか

は、その1回の数値だけでは区別できません。ASOは「1回の値」より「時間をおいた変化(上がっているか・下がっているか)」が大事な検査なのです。数週間あけて再検査し、上がっていれば最近の感染、安定〜低下していれば過去の名残、と考えます。

そもそも何のために測る検査なの?

ASOが本当に役立つのは、溶連菌感染の「あとに起こる合併症」を考えるときです。代表的なのは次の2つです。

  • 溶連菌感染後の急性糸球体腎炎:のどや皮膚の溶連菌感染から1〜3週間ほどで、血尿・むくみ・尿の異常などが出ることがある腎臓の病気
  • リウマチ熱:溶連菌感染のあとに、関節炎や心臓の炎症などを起こす病気(現在の日本ではまれ)

こうした合併症が疑われるとき、「背景に溶連菌感染があったか」を裏づける材料の一つとしてASOを使います。逆に言えば、こうした症状がまったくないのにASOだけが高くても、多くの場合は大きな問題にはなりません。

見かけ上、高く出ることもある(偽高値)

ASOは溶連菌に関係しない理由で、見かけ上高く出ることがあります。代表的なのは次のような状態です。

  • 高脂血症(脂質が高い/コレステロール・中性脂肪が高い)
  • 肝臓の病気(肝炎など)
  • ネフローゼ症候群(尿にたんぱくが大量に出る腎臓の病気)
  • 血液中のたんぱく(γグロブリン)が多い状態 など

これらでは、血液中の成分が検査に影響して、実際には溶連菌と関係なくても数値が高めに出ることがあります。とくに健診で脂質が高めの方が、ついでにASOも高めに出るのはよくある組み合わせです。「ASOが高い=溶連菌のせい」と決めつけられないのは、こうした理由もあるからです。

皮膚の感染では上がりにくい

ASOはのどの溶連菌感染では上がりやすい一方、皮膚の溶連菌感染(とびひなど)では上がりにくいという特徴があります。実際、のどの感染では多くで陽性になりますが、皮膚の感染では陽性になる割合がぐっと下がります。

そのため、皮膚の感染のあとの腎炎などを疑う場合は、ASOだけでなく「ASK」や「抗DNase B」といった別の抗体を組み合わせて調べることがあります。日本ではASOとASKを併用することがよくあります。

症状がなく高いだけなら、抗菌薬は要りません

ときどき「ASOが高いから抗生物質(抗菌薬)を飲んだほうがいいですか?」と聞かれますが、症状のないASO高値は、抗菌薬を飲む理由にはなりません

  • ASOは「過去の感染の抗体」なので、高いこと自体は治療の対象ではない
  • 活動性の感染(実際に今、症状を伴う溶連菌感染がある)や、合併症の予防が必要な特別な場合を除いて、抗菌薬は使わない
  • 不要な抗菌薬は、副作用や耐性菌の問題につながる

「数値が高い」という理由だけで薬を足すのは、むしろデメリットのほうが大きくなります。

こんなときは医療機関へ

ASOの数値そのものより、体に出ているサインのほうが大切です。次のような症状があるときは受診してください。

  • のどの強い痛み・高熱(今の溶連菌感染が疑わしいとき)
  • 血尿(赤〜茶色の尿)、尿の泡立ち、まぶたや足のむくみ(腎炎のサイン)
  • 関節の痛みや腫れ、動悸・息切れ(まれですがリウマチ熱関連)
  • 健診でASOと一緒にCRP(炎症の数値)も高いと言われた
  • くり返すのどの炎症がある

とくにASOとCRPの両方が高いと言われた方は、考え方が少し変わります。これは別の記事で詳しく解説します(準備中)。

よくある質問

Q. ASOが高いと、今すぐ何か治療が必要ですか?

症状がなく、腎炎やリウマチ熱を疑う所見もなければ、多くの場合すぐの治療は必要ありません。ASOは「過去の感染の痕跡」なので、高いこと自体は病気ではありません。

Q. 1回の検査で「高い」と言われました。どうすれば?

1回の数値だけでは「最近の感染」か「過去の名残」か区別できません。必要に応じて数週間あけて再検査し、上がっているか・下がっているかを見ます。症状や他の検査とあわせて判断します。

Q. 脂質が高いとASOも高く出ると聞きました。本当?

はい。高脂血症・肝臓の病気・ネフローゼなどでは、溶連菌と関係なくASOが高めに出ることがあります。脂質や肝機能もあわせて確認すると判断しやすくなります。

Q. のどが痛いのですが、ASOで溶連菌かどうか分かりますか?

今のどに溶連菌がいるかは、ASOではなく「のどの迅速検査」や培養で調べます。ASOは過去の感染の抗体なので、急性ののどの感染の原因判定には向きません。

Q. 子どものASOが高いと言われました

子どもは溶連菌にかかる機会が多く、その名残でASOが高めのことはよくあります。症状や尿の異常などがなければ、過度に心配する必要はないことが多いですが、気になる場合はご相談ください。

まとめ

  • ASO(抗ストレプトリジンO)は過去の溶連菌感染の"抗体"を見る検査
  • 今の感染を調べる検査ではない(今の溶連菌はのどの迅速検査・培養で調べる)
  • 感染後1〜3週で上がり、3〜5週でピーク、その後数か月かけて下がる
  • 1回の値より時間をおいた変化が大事
  • 本来の用途は溶連菌感染後の腎炎・リウマチ熱などを考えるとき
  • 高脂血症・肝疾患・ネフローゼなどで見かけ上高くなることがある
  • 皮膚の感染では上がりにくく、ASKや抗DNase Bを併用することがある
  • 症状のないASO高値は抗菌薬の対象ではない

当院でも、ASOの数値だけにとらわれず、症状・経過・他の検査とあわせて意味を判断しています。「ASOが高いと言われて不安」「どう考えればいいか分からない」という方は、お気軽にご相談ください。

※本記事は一般的な解説です。基準値は検査方法によって異なり、実際の診断・治療は個別の状況により変わります。具体的な対応は医療機関での評価を受けてください。

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