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入学・就職の4月に気をつけたい病気|内科医が解説する新生活の健康リスク

4月は入学・入社・転勤・異動と、生活環境が大きく変わる季節です。新しい環境への期待がある一方で、体には想像以上の負荷がかかります。

この記事では、内科医の立場から、4月に気をつけたい病気と体調不良のサインを解説します。

ストレスによる体の不調

4月に内科を受診される方で最も多いのが、環境変化に伴うストレス性の体調不良です。

自律神経の乱れ

新しい職場や学校に慣れようとする緊張が続くと、自律神経のバランスが崩れます。症状は多彩です。

  • 動悸、息苦しさ
  • めまい、立ちくらみ
  • 頭痛(特に緊張型頭痛)
  • 不眠、中途覚醒
  • 倦怠感、朝起きられない

「心臓が悪いのでは」「貧血では」と心配されて受診される方が多いのですが、採血や心電図では異常が見つからないケースがほとんどです。それ自体が「自律神経の問題」を示唆するサインでもあります。

内科では漢方薬で対応できるケースが多く、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)は喉の詰まり感・不安・動悸に、加味逍遙散はイライラ・肩こり・頭痛に効果が期待できます。

過敏性腸症候群(IBS)

通勤・通学中の腹痛や下痢は、過敏性腸症候群の典型的な症状です。「朝、家を出る前にお腹が痛くなる」「電車に乗ると急にトイレに行きたくなる」という訴えは、4月に急増します。

日本での有病率は約6〜14%と言われており、決して珍しい病気ではありません。Rome IV基準では「週1回以上の腹痛が3ヶ月以上続き、排便との関連がある」場合に診断されます。

治療にはポリカルボフィルカルシウム(コロネル)で腸内水分を調節する方法や、漢方薬の桂枝加芍薬湯が腹痛に即効性があり使いやすい薬です。我慢せず受診してください。

胃の不調・逆流性食道炎

歓迎会や飲み会の増加で、胃もたれ・胸焼け・胃痛を訴える方が増えます。もともと胃が弱い方がアルコールや脂っこい食事を続けると、逆流性食道炎が一気に悪化します。

「飲み会のあと、横になると胸が焼ける」という症状があれば受診をおすすめします。

4月のアレルギー:花粉・黄砂・PM2.5・ハウスダスト

ヒノキ花粉のピーク

スギ花粉は3月がピークですが、ヒノキ花粉は3月下旬〜4月上旬が本番です。「スギの時期は大丈夫だったのに4月になって急にくしゃみが出る」という方は、ヒノキ花粉症の可能性があります。

スギとヒノキは交差抗原性があり、スギ花粉症の約70〜80%がヒノキにも反応します。2026年の九州は前シーズンより飛散量はやや少ない見込みですが、油断はできません。

黄砂とPM2.5──福岡は特に注意

福岡は地理的に大陸からの黄砂・PM2.5の影響を最も受けやすい地域です。4月は黄砂の飛来が本格化します。

黄砂が飛来すると、小児喘息の救急受診が約1.8倍に増加するという研究データがあります。さらに黄砂が花粉と接触すると花粉の約80%が破裂し、より強いアレルギー反応を引き起こすことが報告されています。

PM2.5の環境基準は日平均値35μg/m³以下ですが、70μg/m³を超えると注意喚起が発令されます。福岡では春先にこの基準を超える日があります。

  • 咳が止まらない(咳喘息の悪化)
  • 目のかゆみ、充血
  • 鼻づまり、くしゃみ
  • 喉のイガイガ

花粉症の薬だけでは効かない場合、黄砂やPM2.5が原因のことがあります。外出時のマスク着用と、帰宅後の洗顔・うがいが基本的な対策です。

引っ越し先のハウスダスト

4月は引っ越しシーズンでもあります。新しい部屋に入った途端にくしゃみや鼻水が止まらなくなる、咳が出る──これはハウスダストアレルギーの可能性があります。

空き部屋の期間中にたまったホコリ、ダニの死骸、カビが原因です。特にエアコンの内部や押し入れ、カーペットの裏は要注意です。築年数の古い物件ではカビの問題も加わります。

対策は入居前の徹底的な掃除と換気ですが、症状が出てしまった場合は花粉症と同じ抗ヒスタミン薬で対応できます。「花粉の時期は終わったのに症状が続く」という方は、ハウスダストを疑ってみてください。

4月に注意すべき感染症

麻疹(はしか)──2026年は要警戒

集団生活が始まる4月は、麻疹の感染リスクが高まります。2025年は全国で265例と、パンデミック後最多を記録。2026年も1〜3月で累計100人と、前年同期の22人を大きく上回っています。

2026年2月には、東京で発生した麻疹患者が福岡市を訪れていたことが判明し、福岡市から注意喚起が出されました。

特に注意が必要なのはワクチン接種歴です。

生まれ年

接種状況

備考

1972年10月1日以前

定期接種なし(0回)

自然感染で抗体を持つ方が多い

1972年10月2日〜1990年4月1日

定期接種1回のみ

最もリスクが高い世代

1990年4月2日以降

定期接種2回

十分な免疫が期待される

麻疹は空気感染し、感染力が極めて強い疾患です。接種歴が1回以下、または不明の方はMRワクチンの追加接種を検討してください。

風疹──妊娠を考えている方は抗体検査を

風疹も集団生活で広がりやすい感染症です。妊娠初期の感染は先天性風疹症候群のリスクがあります。

福岡市では風疹の抗体検査が無料で受けられます。

  • 昭和37年4月2日〜昭和54年4月1日生まれの男性:クーポン券で抗体検査・ワクチン接種ともに無料(期限は2027年3月末まで延長)
  • 妊娠を希望する女性とその同居者:抗体検査無料、ワクチン費用の一部助成あり

対象の方はぜひ制度を活用してください。

結核

日本は先進国の中で結核の罹患率が比較的高い国です。寮生活や密集した環境で過ごすことが多い新入生・新入社員は、2週間以上続く咳がある場合、胸部レントゲンの検査をおすすめします。

入社健診・入学健診で見つかる異常

4月前後は健康診断の時期です。「健診で引っかかった」と受診される方が急増します。2024年度に判定基準が改定されていますので、最新の数値を整理します。

項目

基準値(A判定)

要注意(C判定)

要精検・治療(D判定)

LDLコレステロール

60〜119 mg/dL

140〜179

180以上

AST(GOT)

30以下

36〜50

51以上

ALT(GPT)

30以下

36〜50

51以上

Hb(男性)

13.1〜16.3 g/dL

11.0〜12.0

10.9以下

Hb(女性)

12.1〜14.5 g/dL

10.0〜11.0

9.9以下

血圧

129/84以下

140〜159/90〜99

160/100以上

2024年改定のポイント:AST/ALTの基準値が従来の40以下から30以下に厳格化されました。脂肪肝の早期発見を重視した変更です。「去年までは正常だったのに今年引っかかった」という方は、基準が変わった可能性があります。

また、2025年8月に発表されたJSH2025高血圧ガイドラインでは、降圧目標が全年齢で130/80mmHg未満に統一されました。

健診で異常が指摘されても、すぐに治療が必要とは限りません。ただし「様子を見よう」と放置するのが一番よくないパターンです。まず内科で再検査を受けて、今の状態を正確に把握することが大切です。

5月病を防ぐために4月にできること

5月の連休明けに気力が出なくなる「5月病」は、医学的には適応障害と診断されることが多い状態です。DSM-5では「明確なストレス因から3ヶ月以内に症状が出現し、ストレスの程度に対して過剰な苦痛がある」場合に診断されます。

厚生労働省の統計によると、大卒の新入社員の約35%が3年以内に離職しています。5月病は決して「気の持ちよう」ではありません。

予防のポイントは以下の通りです。

  • 睡眠を削らない:新しい環境で頑張りすぎて睡眠時間を削るのが最も危険です
  • 完璧を目指さない:4月に100%の力を出し続けると5月に電池が切れます
  • 体の異変を無視しない:「まだ大丈夫」と思っているうちに受診してください
  • 飲み会は断ってもいい:歓迎会は義務ではありません。体調優先で

不眠が続く場合は、内科でも短期的な睡眠導入薬や漢方(加味帰脾湯など)で対応可能です。重症の場合は精神科への紹介も行います。

まとめ

  • 4月は環境変化のストレスで自律神経の乱れ、過敏性腸症候群、胃の不調が増えます
  • ヒノキ花粉・黄砂・PM2.5・ハウスダストの四重苦に注意(特に福岡)
  • 麻疹は2026年も増加中。ワクチン接種歴を確認してください
  • 風疹の抗体検査は福岡市の助成制度を活用しましょう
  • 入社健診の判定基準は2024年に変わっています。異常が出たら放置せず再検査を
  • 5月病の予防は4月の過ごし方で決まります

新生活のスタートで体調を崩すのはよくあることです。「こんなことで病院に行っていいのかな」と迷ったら、遠慮なく受診してください。


ひろつ内科クリニック
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