Apple Watchで「心房細動の可能性」の通知が来たら——受診の目安と、病院での"答え合わせ"を内科医が解説
Apple Watchなどのスマートウォッチで、「心房細動の可能性があります」という通知が届いて、驚いて受診される方が増えています。突然そんな通知が来ると不安になると思います。大切なのは、慌てないこと、でも放置しないことです。この通知が何を意味していて、どうすればよいのかを、内科医の立場から整理します。
「心房細動の可能性」通知は何を見ているのか
スマートウォッチには、手首のセンサーで脈のリズムを継続的にチェックし、不規則な心拍が続いたときに知らせてくれる機能があります。加えて、心電図アプリで手動で記録する機能もあります。日本では、こうした心電図の機能は医療機器として承認されています(機能ごとの承認については、別の記事「承認マップ」で整理しています)。つまり、この通知は、まったくの当てずっぽうではなく、一定の基準にもとづいて「脈が乱れているかもしれない」と教えてくれるものです。
そもそも心房細動とは
心房細動は、心臓の上の部屋(心房)が細かく震えるように動いてしまい、脈が不規則になる不整脈です。年齢とともに増え、はっきりした自覚症状がないこともよくあります。心房細動そのものですぐ命に関わるわけではありませんが、注意が必要な理由は、心房の中で血液がよどんで固まり(血栓)、それが脳に飛んで脳梗塞(心原性脳塞栓症)を起こすことがある点です。だからこそ、気づいて評価しておくことに意味があります。
通知=診断ではありません
ここが大事な点です。通知はあくまで「可能性」を知らせるもので、それ自体が診断ではありません。体を動かしたときのノイズなどで、実際には問題ないのに通知が出ること(偽陽性)もありますし、逆に、ときどきしか起こらないタイプの心房細動では、その瞬間に記録できず通知が出ないこと(見逃し)もあります。通知が来ても来なくても、最終的な判断は医療機関での検査で行います。
通知が来たら、どうすればいいか
まずは落ち着いてください。そのうえで、動悸、息切れ、胸の不快感、めまい、強い疲れなどの症状がないかを確認します。強い症状や失神がある場合は、早めの受診が必要です。症状がなくても、通知が出たこと(できれば、そのときのスマートウォッチの記録)を控えておき、医療機関に相談してください。スマートウォッチで記録した心電図のデータは、受診時の参考になります。
病院での"答え合わせ"
医療機関では、まず通常の心電図を記録します。ただし、心房細動が「ときどきだけ」起こるタイプ(発作性)の場合、受診したその瞬間には出ていないこともよくあります。そのため、必要に応じて、24時間〜長時間つけて記録するホルター心電図や、より長期間の記録を行い、通知が示した脈の乱れの正体を確かめます。スマートウォッチの通知は、こうした検査につなげる「入り口」として役立ちます。
心房細動と分かったら
検査で心房細動が確認された場合は、脳梗塞のリスクを年齢や持病などから評価し、必要に応じて血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬)を検討します。あわせて、脈の速さや不整脈そのものへの対応を考え、循環器の専門医と連携して進めることもあります。大切なのは、自己判断で市販薬などを使わず、きちんと評価を受けることです。
こんなときは早めに受診を
- 「心房細動の可能性」の通知が繰り返し出る
- 動悸、息切れ、胸の不快感、めまい、失神などの症状がある
- 高血圧・糖尿病・心臓の病気など、脳梗塞のリスクになる持病がある
まとめ
スマートウォッチの「心房細動の可能性」通知は、脈の乱れに気づく貴重なきっかけです。ただし通知=診断ではなく、放置せず、かといって過度に怖がらず、医療機関で"答え合わせ"をすることが大切です。通知が出たときは、記録したデータを持って受診してください。当院でも、通知や記録データの受け止め方についてご相談いただけます。
(あわせて、当院の「スマートウォッチの健康機能、どれが医療機器でどれがウェルネスか」や、心電図の所見〔早期再分極・左軸偏位など〕の解説記事もご覧ください。)
参考文献
- 日本循環器学会/日本不整脈心電学会「不整脈(心房細動)に関する診療ガイドライン」
- 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「プログラム医療機器の承認等情報」
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