涼しくなっても食欲が戻らない——「意図しない体重減少」を放置してはいけない理由を内科医が解説
「夏バテで食欲が落ちて、涼しくなれば戻ると思っていたのに、まだ食べられない」「気づいたら数か月で体重が数キロ減っていた」——秋口の外来で増える相談です。夏の食欲低下は誰にでもありますが、涼しくなっても戻らない食欲不振と、意図しない体重減少は、体からの重要なサインのことがあります。放置してよい場合と調べるべき場合を整理します。
まず、どのくらいの体重減少が「要注意」なのか
目安として、ダイエットをしていないのに6〜12か月で体重の5%以上が減った場合(60kgの方なら3kg以上)は、医学的に「意図しない体重減少」として原因を調べる価値があるとされています。「ズボンがゆるくなった」「顔がこけたと言われた」も、数字に表れる前のサインです。
逆に、夏の間の1〜2kgの変動で、涼しくなって食欲が戻りつつあるなら、多くは生理的な範囲です。まず食べやすいものから量を戻していけば大丈夫です。
食欲不振が続くとき、内科で考える原因
- 消化器の病気:胃炎・胃潰瘍、機能性ディスペプシア、肝臓や膵臓の病気。胃の不調を伴う食欲低下で最初に考える領域です
- 甲状腺の異常:甲状腺機能低下症では食欲が落ち、逆に亢進症では「食べているのに痩せる」が起こります。採血で確認できます
- 糖尿病:血糖が非常に高い状態では、食事をとってもエネルギーにできず体重が減ります。「食べているのに痩せる+喉が渇く+尿が多い」は典型的なサインです
- うつ状態・ストレス:食欲は心の状態を敏感に映します。眠れない・気分が沈む・楽しめないを伴うなら、心の面からのアプローチも必要です
- 薬の影響:新しく始めた薬(痛み止め、一部の糖尿病薬・抗菌薬など)で食欲が落ちることがあります
- 悪性腫瘍:頻度は高くありませんが、意図しない体重減少で必ず除外を考える領域です。だからこそ「調べて安心する」ことに意味があります
- ご高齢の方では、嚥下機能や口腔内の問題、孤食、味覚の変化など、病気以外の要因も重なりやすく、放置すると低栄養→筋力低下の悪循環(フレイル)に進みます
受診したら何を調べるのか
まず、いつから・どのくらい体重が減ったか、食欲の落ち方(食べたくないのか、食べるとすぐ苦しいのか、食べても痩せるのか)、胃の症状・便通・気分の変化・服薬の変化を伺います。この「どのタイプの食欲不振か」で、調べる方向が大きく変わります。
検査は、血液検査(貧血・肝機能・腎機能・血糖・甲状腺・炎症反応・栄養状態)と尿検査が基本で、状況に応じて胸部レントゲン、腹部エコー、胃カメラなどを組み合わせます。多くの場合、この範囲で原因の見当がつくか、少なくとも「急いで心配すべき病気ではない」ことを確認できます。
「これくらいで受診していいのか」と迷う方が多い症状ですが、食欲と体重は全身の健康のバロメーターです。意図しない5%の体重減少、2週間以上続く食欲不振、食べているのに痩せる——このどれかに当てはまるなら、一度ご相談ください。調べた結果「夏の疲れでした」なら、それが一番の収穫です。
参考文献
- 日本消化器病学会 関連ガイドライン
- 厚生労働省 e-ヘルスネット(高齢者の低栄養・フレイル関連)
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