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授乳中に安全に使える抗菌薬は?——「授乳をやめなくていい」ケースと注意点を内科医が解説

授乳中に抗菌薬(抗生物質)が必要になったとき、「赤ちゃんに影響しないか」「授乳をいったん止めたほうがいいのか」と不安になる方は多いと思います。結論からお伝えすると、多くの場合、授乳を続けたまま使える抗菌薬があります。やみくもに授乳を中断する必要はないことがほとんどです。系統ごとに整理してみます。

大前提——ほとんどの抗菌薬は授乳を続けたまま使える

抗菌薬の多くは、お母さんが飲んでも母乳に移る量はごくわずかです。赤ちゃんが母乳から受け取る量は、赤ちゃん自身が病気のときに使う治療量よりもずっと少ないことが分かっています。実際、ペニシリン系やセフェム系は、赤ちゃん自身の治療にも使われる薬です。

むしろ、「授乳中だから」と自己判断で薬をやめたり授乳を中断したりすると、お母さんの感染症の治療が不十分になったり、断乳につながったりと、別の不利益が生じます。必要な治療はきちんと受けることが大切です。

安全性が高い——第一に検討される系統

授乳中でも安全性が高いとされ、よく使われるのは次の系統です。

  • ペニシリン系(アモキシシリンなど):母乳移行が少なく、赤ちゃんの治療にも使われます。授乳中の使用は問題ないと考えられています。
  • セフェム系(セファレキシンなど):ペニシリン系と同様に安全性が高いとされます。
  • マクロライド系(クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど):授乳中も比較的安全に使えると考えられています。

これらは、国立成育医療研究センターの「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」にも挙げられている系統です。

状況により注意が要る系統

以下は「絶対にだめ」というより、赤ちゃんの月齢や使用期間、ほかに選べる薬があるかをふまえて慎重に判断する系統です。

  • テトラサイクリン系(ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど):短期間であれば、母乳中のカルシウムと結びついて赤ちゃんの吸収が抑えられるため許容とされますが、長期間の使用は避けるのが一般的です。
  • ニューキノロン系(レボフロキサシンなど):以前は授乳中は避けられてきましたが、母乳移行量は少なく、短期間なら許容とする見解もあります。代わりに使える薬があれば、そちらが選ばれることが多いです。
  • ST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム):生後まもない赤ちゃん、低出生体重児、黄疸のある赤ちゃん、G6PD欠損のある赤ちゃんでは避けるべきとされます。それ以外の場合は短期間なら使えることもあります。
  • メトロニダゾール:低用量では概ね問題ないとされますが、高用量を一度に使う場合は、一時的に授乳を控える選択肢が示されることがあります。

赤ちゃんで気をつけて見ること

授乳を続けながら抗菌薬を使う場合、念のため赤ちゃんの様子を見ておくと安心です。具体的には、下痢や軟便、皮膚の発疹、母乳の飲みが悪くなる、口の中が白くなる(鵝口瘡=口腔カンジダ)といった変化です。気になる症状があれば、早めに小児科や処方を受けた医療機関に相談してください。

迷ったときの相談先

授乳と薬については、信頼できる情報源があります。国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」は、授乳中の薬について相談を受け付け、安全に使えると考えられる薬の一覧も公開しています。ネット上の不確かな情報で自己判断せず、処方を受けた医師や薬剤師に「授乳中であること」を伝えて相談していただくのが、いちばん安全です。

まとめ

授乳中に抗菌薬が必要になっても、多くの場合は授乳を続けたまま使えます。ペニシリン系・セフェム系・マクロライド系は安全性が高く、第一に検討されます。テトラサイクリン系・ニューキノロン系・ST合剤・メトロニダゾールは、月齢や使用期間によって注意が要ります。「授乳をやめなきゃ」と思い込む前に、まずは医師・薬剤師に相談していただければと思います。必要な治療を受けながら、授乳も続けられるケースは少なくありません。

参考文献

  • 国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター「授乳中の薬の使用について」「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」
  • LactMed(米国国立衛生研究所)
  • 各薬剤の添付文書

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