クインケ浮腫(血管性浮腫)はどこを受診すればいい?——専門に診られる医師が少ない現実と、たどり着き方
「唇が急に腫れた」「朝起きたらまぶたが片方だけ腫れていた」——クインケ浮腫(血管性浮腫)について当院の別記事をお読みになって、「では、どこを受診すればいいのか」とお困りの方が多いようです。
先にお伝えしておきたいことがあります。この病気は、専門的に診られる医師が非常に限られています。一般の内科クリニックや皮膚科では、確定診断や専門的な治療まで行うことは難しいのが実情です。当院も例外ではありません。
がっかりさせてしまうかもしれませんが、遠回りをして時間を失うより、最初から適切な場所にたどり着いていただくほうが大切だと考えています。この記事では、その行き先を具体的にお伝えします。
その前に:迷わず救急車を呼ぶサイン
受診先を考える前に、これだけは知っておいてください。腫れがのどの奥(喉頭)に起きると、空気の通り道がふさがれ、窒息する危険があります。
次の症状があるときは、様子を見ずに救急車(119番)を呼んでください。
- のどが詰まる感じ、息がしにくい、息を吸うとゼーゼー・ヒューヒューする
- 声がかすれる、声が出しにくい
- 飲み込みにくい、よだれが飲み込めない
- 舌が腫れてきた
- 顔全体が急速に腫れてきた
これは「どの科か」を考える場面ではありません。時間との勝負です。
なぜ「診られる医師が少ない」のか
理由はいくつかあります。
- 血管性浮腫のなかでも、遺伝性血管性浮腫(HAE)などは患者数が少ない希少な病気で、診療経験のある医師が限られています
- 診断に必要な検査そのものが、普通のクリニックでは実施しにくいのです。要となる「C1インヒビター活性」という検査は、採血したあとすみやかに遠心分離して血漿を取り分け、凍結した状態のまま検査会社へ送る必要があります。院内に遠心機と冷凍保管、そして凍結したまま運ぶ体制がそろっていなければ、そもそも提出できません。この条件を満たせるのは、実質的に総合病院などに限られます
- 発作を止める薬・予防する薬といった専門的な治療は、取り扱いのある施設が中心になります
- 蕁麻疹(じんましん)と見た目が紛らわしく、一般の医療機関では「じんましん」として抗ヒスタミン薬が処方され、効かないまま年月が過ぎてしまうことが少なくありません
実際、腫れを繰り返しているのに診断がつかないまま、長い年月を過ごされる方がいます。「一般のクリニックを何軒も回ったが分からなかった」という経験をお持ちの方も多いはずです。それは、あなたの説明が悪いからでも、医師が不熱心だからでもありません。そもそも診療の入口が限られている病気なのです。
行き先の選び方
蕁麻疹(かゆいブツブツ)を伴い、抗ヒスタミン薬が効く場合
食べ物や薬のあとに出る、かゆみを伴う、抗ヒスタミン薬やステロイドで治まる——このタイプは、アレルギーが関わる一般的な血管性浮腫です。
この場合は、皮膚科・アレルギー科が窓口になります。
抗ヒスタミン薬が効かない、繰り返す場合
次に当てはまる方は、遺伝性血管性浮腫(HAE)など、アレルギーとは別の仕組みで起こる腫れの可能性があります。
- 抗ヒスタミン薬やステロイドを飲んでも効かない
- 蕁麻疹(かゆみ)を伴わないことが多い
- 腫れが出て、1〜3日かけて消えるのを繰り返す
- 家族にも同じような腫れを起こす人がいる
- ときどき強い腹痛の発作がある
このタイプは、一般の内科・皮膚科では対応が難しい領域です。次の専門的な窓口を目指してください。
専門の相談先
- HAEの相談外来:国立病院機構 災害医療センターなど、遺伝性血管性浮腫(HAE)の相談外来を設けている医療機関があります
- 日本補体学会:HAEに関わる検査(補体関連タンパク質・遺伝子検査)の受付体制を整えており、診療についての相談窓口にもなっています
- 大学病院などの、皮膚科・アレルギー科・免疫(膠原病)内科:地域の中核となる病院に、詳しい医師がいる場合があります
- 患者会や疾患情報サイトには、HAEを診断・治療できる医療機関を検索できるものもあります
これらは全国どこにでもあるわけではなく、通院に距離を要することもあります。それでも、「診断がつく場所」にたどり着くことが、遠回りを終わらせる近道になります。
かかりつけ医の使い方——「紹介状をもらう窓口」として
専門外来は、紹介状(診療情報提供書)があるほうがスムーズに受診できることが多く、初診時の負担も変わってきます。
そこで、かかりつけの医療機関には「診断してもらう」のではなく、「専門のところへつないでもらう」という使い方をおすすめします。
- これまでの経過(いつ、どこが腫れ、何時間で消えたか)を伝える
- 抗ヒスタミン薬が効かなかったことを伝える(これは重要な情報です)
- 「HAEなど専門的な評価が必要かもしれないので、専門の医療機関を紹介してほしい」と、はっきり希望を伝える
なお、血圧の薬のうちACE阻害薬(名前の最後が「〜プリル」となるものが多い)は、副作用として血管性浮腫を起こすことがあります。飲み始めてすぐとは限らず、何年も経ってから起こることもあります。心当たりがあっても自己判断で中止せず、処方している医療機関に「腫れが出た」ことを必ず伝えてください。薬の変更で解決することが多い状況です。ここは、かかりつけ医が対応できる部分です。
受診のときに持っていくと、話が早く進むもの
血管性浮腫のいちばんやっかいな点は、受診したころには腫れが引いていることです。医師は「腫れていない状態」を診ることになります。
そこで、次を用意していただくと、専門の医師に伝わる情報量が大きく変わります。
- 腫れているときの写真(スマートフォンで構いません。これが最も強力な材料です)
- いつ・体のどこが腫れたか、消えるまでにかかった時間
- かゆみの有無、蕁麻疹を伴ったかどうか
- 使った薬と、効いたかどうか
- お薬手帳(とくに血圧の薬)
- 家族に同じような症状の人がいるか
- 腹痛発作があったかどうか
次に腫れたときは、つらいと思いますが、まず1枚撮っておいてください。
まとめ
- のどの詰まり・声のかすれ・呼吸のしにくさ・舌の腫れは、迷わず救急車(119番)を
- クインケ浮腫(血管性浮腫)、とくに遺伝性血管性浮腫(HAE)は、専門的に診られる医師が少ない病気です。一般の内科・皮膚科では確定診断や専門治療は難しく、当院でも同様です
- 診断の要となる検査は、採血後すぐの遠心分離と凍結搬送が必要で、設備のある総合病院などでないと実施できません。「まず近所のクリニックで検査だけ」というのが難しい病気です
- 蕁麻疹を伴い抗ヒスタミン薬が効くタイプは、皮膚科・アレルギー科が窓口です
- 抗ヒスタミン薬が効かない、繰り返す、家族歴がある、腹痛を伴う場合は、HAE相談外来・日本補体学会・大学病院などの専門的な窓口を目指してください
- かかりつけ医は「診断してもらう場所」ではなく「紹介状を書いてもらう窓口」として使うのが現実的です
- 受診時は「腫れているときの写真」をぜひお持ちください
参考文献
- 日本補体学会 遺伝性血管性浮腫(HAE)ガイドライン/HAEに関する検査・相談の案内
- 一般社団法人 遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム(DISCOVERY)HAE情報サイト
- 国立病院機構 災害医療センター 遺伝性血管性浮腫(HAE)相談外来
- 小児慢性特定疾病情報センター 遺伝性血管性浮腫(C1インヒビター欠損症)診断の手引き
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