健診で飲酒量を聞かれる理由——純アルコール量の数え方と厚労省飲酒ガイドラインの目安、肝臓・血圧・がんへの影響
健康診断の問診票で「お酒を飲む頻度」や「1日にどのくらい飲むか」を尋ねられた経験がある方は多いと思います。飲酒量は、血圧・肝機能・中性脂肪といった健診の数値を読み解く手がかりになります。お酒の量を「純アルコール量(g)」で数える方法と、厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」が示す目安、肝臓・血圧・がんへの影響を整理します。
健診で飲酒量を尋ねる理由
40〜74歳の方を対象とする特定健診は、生活習慣病の予防を目的とした健診で、質問票、身体計測、血圧測定、脂質・血糖・肝機能の血液検査、検尿などで構成されています。飲酒は血圧や肝機能、中性脂肪の値に影響するため、問診で飲酒量がわかると、検査の数値がなぜその値になっているのかを考える手がかりになります。
国が示す「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」には、保健指導の場で使うAUDIT(アルコール使用障害スクリーニング)と、その結果に基づく減酒支援(ブリーフインターベンション)の手引きが含まれています。AUDITはWHOが開発した10問・40点満点の質問票で、飲酒問題の早期発見・早期介入に用いられる道具です。問診票に飲酒量をそのまま書いていただくことで、検査結果の解釈や生活習慣についての助言がより具体的になります。
純アルコール量の数え方
お酒の影響は、「何杯」「何本」ではなく、含まれる純アルコール量(g)で考えます。厚生労働省は次の計算式を示しています。
純アルコール量(g)=摂取量(ml)×アルコール度数÷100×0.8(アルコールの比重)
たとえばビール(5%)500mlなら、500×0.05×0.8=20gです。同じ式で計算した例です(度数は商品によって異なるため、実際はラベルの表示で計算してください)。
- 日本酒(15%)1合180ml:約22g
- ワイン(12%)グラス1杯120ml:約12g
- 缶チューハイ(7%)350ml:約20g
- 缶チューハイ(9%)500ml:36g
- 焼酎(25%)100ml:20g
- ウイスキー(40%)ダブル60ml:約19g
飲む日と飲まない日がある方は、1週間の合計を7で割ると1日あたりの平均量がわかります。また、体がアルコールを分解できる量は一般に1時間に体重×0.1g程度とされ、体重60kgの方なら20gの分解に3時間あまりかかる計算です。分解の速さには個人差があります。
厚生労働省のガイドラインと国の目安
厚生労働省は2024年2月、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表しました。飲酒に伴うリスクを知ったうえで、一人ひとりが自分に合った飲酒量や飲み方を判断する際の参考にしてもらうことを目的としています。
国の健康づくり計画「健康日本21(第三次)」では、1日あたりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上の人を「生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者」とし、その割合を令和14年度までに10%へ減らすことを目標にしています。ビール(5%)500ml缶でいえば、男性は2本、女性は1本でこの量に達します。
ガイドラインには、病気ごとに発症リスクが上がる飲酒量の目安(研究結果)が示されています。主なものは次のとおりです。
- 高血圧:男女とも、少量の飲酒でもリスクが上がる
- 大腸がん:男女とも、週150g(1日あたり約20g)以上
- 肝がん:男性は週450g(1日あたり約60g)以上、女性は週150g(1日あたり約20g)以上
- 食道がん:男性は少量の飲酒でもリスクが上がる
- 乳がん:女性は週100g(1日あたり約14g)以上
これらは「ここまでなら安全」という線ではなく、研究で発症リスクの上昇が見られた量で、影響には個人差があります。女性や高齢の方、飲むと顔が赤くなる体質の方は、飲酒の影響を受けやすいことも示されています。飲み方の工夫としては、自分の飲酒量を把握する、飲む量をあらかじめ決める、飲む前や飲みながら食事をとる、合間に水や炭酸水を飲む、1週間のうちに飲まない日をつくる、といった方法が挙げられています。短時間での多量の飲酒、不安や不眠を紛らわすための飲酒、病気療養中の飲酒は避けるべき飲み方とされています。
肝臓への影響
アルコールは主に肝臓で分解されます。飲みすぎで最初に起こりやすいのがアルコール性の脂肪肝で、飲酒をやめれば短期間で改善するのが特徴とされています。脂肪肝の状態で多量の飲酒を続けると、発熱や黄疸、腹水を伴うアルコール性肝炎を起こすことがあります。日本では、目立った炎症の症状がないまま肝臓の線維化が少しずつ進み、肝硬変に至る経過も多いとされます。
健診では、AST・ALT・γ-GT(γ-GTP)が肝機能の指標です。γ-GTは飲酒量が多いときに上がりやすく、健診での正常値は50U/L以下とされています。ただし、薬の影響や胆道の病気でも上がるため、数値だけで原因を決めることはできません。自覚症状のないまま進むこともあるため、数値と飲酒量をあわせて見ることが大切です。
血圧・中性脂肪への影響
長期間の飲酒は血圧を上昇させ、高血圧の原因になりうるとされています。前述のとおり、厚生労働省のガイドラインでも、高血圧は少量の飲酒から発症リスクが上がるとされています。国内の予防医療センターで毎年の健診を受けた約5万9,000人のデータを解析した2025年の研究では、少量〜中等量の飲酒をやめた人で血圧が下がり、飲酒を始めた人では飲酒量に応じて血圧が上がる傾向が報告されました。日本高血圧学会も、血圧を下げるための生活習慣の改善のひとつに節酒を挙げています。
また、飲酒によって中性脂肪が上がることはよく見られます。アルコールは1gあたり7kcalあり、おつまみや食欲の増加も重なって体重が増えやすくなります。健診で血圧や中性脂肪、腹囲を指摘された方は、まず飲酒量を純アルコール量で振り返ってみてください。
がんへの影響
国立がん研究センターは、飲酒は男女ともに喫煙・感染に次いで多いがんの要因であるとしています。飲酒によって肝がん・食道がん・大腸がん・頭頸部がんのリスクは確実に増加し、男性の胃がんや女性の閉経前の乳がんのリスクもほぼ確実に増加するとされています。日本人男性を対象とした研究では、1日平均の純エタノール量が23g未満の人に比べ、46g以上の人で40%程度、69g以上の人で60%程度、がんになるリスクが高くなりました。同センターは、がんのリスクを減らすためにはお酒を飲まないことがベストと考えられる、としています。
飲むと顔が赤くなる、動悸がするといった反応(フラッシング反応)は、アルコールの分解でできるアセトアルデヒドを分解する酵素(ALDH2)の働きが弱い体質で起こりやすく、この体質は東アジアの人に多いことが知られています。アセトアルデヒドはヒトの食道がんの原因にもなるとされています。少量で顔が赤くなる方は、飲み慣れて赤くなりにくくなった場合も含めて、飲酒量に注意が必要です。
受診の目安
- 健診で肝機能(AST・ALT・γ-GT)、血圧、中性脂肪の異常を指摘された
- 1日あたりの純アルコール量が、男性40g・女性20gを超える日が多い
- 飲む量を減らそうとしても減らせない、飲酒について家族から心配されている
- 少量で顔が赤くなる体質だが、日常的に飲酒している
- 皮膚や白目が黄色い、おなかが張る、飲み込むときにつかえる感じが続く
飲酒をコントロールできないと感じるときは、各地の精神保健福祉センターでも相談を受け付けています。
参考文献
- 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月)
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」別添2「保健指導におけるアルコール使用障害スクリーニング(AUDIT)とその評価結果に基づく減酒支援(ブリーフインターベンション)の手引き」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「科学的根拠に基づくがん予防法」
- Suzuki T, Fukui S, Yoneoka D, Aoki J, Fujiwara T. Blood Pressure After Changes in Light-to-Moderate Alcohol Consumption in Women and Men: Longitudinal Japanese Annual Checkup Analysis. J Am Coll Cardiol. 2025. doi:10.1016/j.jacc.2025.09.018
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