急性副鼻腔炎——風邪のあとの黄色い鼻水と頬・額の痛み、自然に治る経過と抗菌薬が必要になるサインを内科医が解説
風邪をひいて数日たち、熱やのどの痛みは落ち着いてきたのに、黄色や緑色の鼻水が続き、頬や額が重く痛む——こうした症状があるとき、副鼻腔炎なのか、抗菌薬(抗生物質)が必要なのかを考えるための目安があります。風邪のあとの副鼻腔の炎症の多くは、抗菌薬を使わなくても自然に軽快していきます。一方で、細菌感染を考えたほうがよい経過や、急いで受診したほうがよいサインもあります。厚生労働省の手引きなどをもとに、見分け方と経過の目安を整理します。
急性副鼻腔炎とは——風邪に続いて起こる鼻と副鼻腔の炎症
副鼻腔は、鼻の周りを取り囲む顔の骨の中にある、空気の入った空洞です。急性副鼻腔炎では、鼻水・鼻づまり・のどに流れ落ちる鼻水(後鼻漏)・咳のほか、頭痛や頬・額の痛み、顔の圧迫感などがみられます。厚生労働省の手引きでは、副鼻腔の炎症はほとんどの場合に鼻の中の炎症を伴い、鼻の症状が先に出ることから、最近では「鼻副鼻腔炎」と呼ぶことが多いと説明されています。
黄色い鼻水だけでは「細菌性」とはいえません
風邪のはじめは透明でさらっとした鼻水が、経過とともに黄色や緑色のねばりのある鼻水に変わることがあります。厚生労働省の「抗微生物薬適正使用の手引き」では、鼻水の色だけではウイルス感染と細菌感染を区別できないとされています。
同じ手引きでは、ウイルスによる上気道の感染症(いわゆる風邪)のうち、細菌性の鼻副鼻腔炎を合併するのは2%未満と報告されていることが紹介されています。つまり、風邪のあとの鼻や副鼻腔の症状の大部分は、抗菌薬を必要としないと考えられています。
自然に軽快していく経過と、その間のセルフケア
手引きによると、風邪(感冒)は発症から3日目前後に症状のピークを迎え、7〜10日ほどで軽快していくのが一般的な経過です。咳は3週間ほど続くこともあります。鼻水が黄色くなっていても、全体として少しずつ楽になっているなら、自然な回復の途中にあると考えられます。この間のつらい症状は、解熱鎮痛薬などで和らげることができます。
- 解熱鎮痛薬——解熱鎮痛薬でぜんそく発作が出たことがある方(いわゆるアスピリンぜんそく)、胃潰瘍のある方、重い肝臓や腎臓の病気のある方などには使えない種類のものがあり、妊娠中も使える薬が限られます。持病がある方やほかの薬を飲んでいる方は、市販薬を選ぶ前に医師や薬剤師に相談してください
- 市販の点鼻薬——鼻づまりをとる血管収縮成分を含む点鼻薬は、使いすぎると、かえって鼻づまりを起こすことがあります。説明文書では長く続けて使わないよう注意されているので、書かれた回数・用量を守ってください
- 鼻うがい(鼻洗浄)——行う場合、米国疾病予防管理センター(CDC)は、水道水をそのまま使わず、「蒸留水」「滅菌水」と表示された水か、1分間沸騰させてから冷ました水道水を使うよう勧めています
抗菌薬を考えるサイン——「長引く」「ぶり返す」「重い」
手引きでは、通常の経過から外れて症状が進行性に悪化する場合や、いったん良くなりかけた症状が再び悪化する場合(二峰性の悪化)には、細菌感染の合併を考えるとしています。
日本の手引きは、成人の急性鼻副鼻腔炎を、鼻水の程度、顔や額の痛みの程度、医師が鼻の中を観察したときの鼻汁や後鼻漏の様子をもとに、軽症・中等症・重症に分けています。そのうえで、軽症では抗菌薬を使わずに経過をみることを推奨し、中等症または重症の場合に限って、抗菌薬(アモキシシリン)の内服を検討することを推奨しています。重症度の判断には鼻の中の診察が含まれるため、ご自身の症状だけで決めることはできません。なお、子どもについては大人とは別の基準が示されており、この記事は主に持病のない大人を想定しています。糖尿病などの持病がある方や、免疫の働きを抑える薬を使っている方は、早めに医療機関に相談してください。
補足として、米国疾病予防管理センター(CDC)の医療者向けの資料は、症状が10日を超えて続き改善しない場合や、風邪がいったん良くなりかけたあとに再び悪化する場合などを、細菌性の副鼻腔炎を考える経過として挙げています。米国のガイドライン(米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会財団、2025年)は、合併症のない場合には重症度にかかわらず、医師が経過を確認しながら抗菌薬を使わずに様子をみる方法も初期対応の選択肢として示し、抗菌薬を使う場合はアモキシシリン(クラブラン酸との配合剤を含む)を第一選択としています。CDCは、強い頭痛や顔の痛み、3〜4日を超えて続く発熱も受診の目安に挙げています。
抗菌薬を使うときに知っておきたいこと
抗菌薬は細菌に作用する薬で、ウイルスには作用しません。手引きでは、風邪に抗菌薬を使っても治りが早くなることはないこと、成人では抗菌薬を使った人のほうが、偽薬(プラセボ)を使った人に比べて嘔吐・下痢・発疹などの副作用が多かったと報告されていることが紹介されています。必要のない抗菌薬の使用は、薬の効きにくい細菌(薬剤耐性菌)を増やす原因にもなります。
- アモキシシリンはペニシリン系の抗菌薬です。添付文書では、この薬の成分で過敏症を起こしたことがある方には使わないとされています。以前に抗菌薬で発疹などのアレルギー症状が出たことがある方は、診察の際に医師に伝えてください。ほかに飲んでいる薬がある方も、飲み合わせを確認するため、お薬手帳などで伝えてください
- 同じ添付文書では、伝染性単核症の方には、発疹が出やすくなるおそれがあるため使わないとされています
- 処方された場合は、飲む量・回数・日数について医師の指示に従ってください
片側だけの症状や、長引くときに考えること
片側だけの鼻水や頬の痛みが続き、鼻水にいやなにおいがある場合は、上の奥歯の虫歯や歯の根の炎症が頬の奥の副鼻腔(上顎洞)に広がった「歯性上顎洞炎」のことがあります。この場合は原因となる歯の治療が必要になることがあり、歯科と連携した対応が求められます。また、症状が長引く場合や、副鼻腔炎を繰り返す場合は、耳鼻咽喉科など専門の医療機関での評価が必要になることがあります。
受診の目安
次のような場合は、医療機関に相談してください。
- 鼻水・鼻づまり・顔の痛みが10日を超えて続き、良くなる気配がない
- いったん良くなったあとに、再び鼻水や顔の痛み、発熱が悪化した
- 強い頭痛や顔の痛みがある、発熱が3〜4日を超えて続く
- 片側だけの症状が続く、鼻水にいやなにおいがある
- 症状が長引いている、副鼻腔炎を何度も繰り返している
また、まれですが、副鼻腔の炎症が目の周りや頭の中に広がる合併症(眼窩の感染、髄膜炎、脳膿瘍など)が報告されています。視力の障害が出てから治療までに時間がかかった例では視力の回復が難しかったとする報告もあるため、次の症状があるときは様子を見ずに、救急外来を含めてすぐに医療機関を受診してください。
- まぶたや目の周りが腫れる・赤くなる
- 目を動かすと痛い、物が二重に見える、見えにくい、目が前に出てきたように見える
- 強い頭痛がある、首の後ろが硬く前に曲げにくい
- 意識がぼんやりする、話のつじつまが合わない
参考文献
- 日本鼻科学会「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン 2010年版(追補版)」日本鼻科学会会誌 53巻2号(2014年)/日本鼻科学会「鼻副鼻腔炎診療の手引き」日本鼻科学会会誌 63巻1号(2024年)
- 厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編」(2026年1月)/厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第三版」(2023年11月)
- Payne SC, et al. Clinical Practice Guideline: Adult Sinusitis Update. Otolaryngology–Head and Neck Surgery. 2025;173(Suppl 1):S1–S56(米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会財団)
- 米国疾病予防管理センター(CDC)「Sinus Infection Basics」「How to Safely Rinse Sinuses」「Outpatient Clinical Care for Adults」
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