急性膵炎——飲み会のあとのみぞおち・背中の強い痛み、アルコールと胆石という主な原因、血液検査と画像による診断、救急のサインと再発予防を内科医が解説
10月も終わりに近づき、これから忘年会など、お酒の席が増える季節を迎えます。飲み会のあとにみぞおち(胃のあたり)が痛むと、「飲みすぎた」「食べすぎた」と様子を見てしまいがちです。けれども、みぞおちから背中にかけての強い痛みの中には、急性膵炎(きゅうせいすいえん)が隠れていることがあります。
この記事では、急性膵炎の仕組みと症状、主な原因、病院での診断の考え方、救急車を呼ぶべきサイン、そして再発を防ぐためのポイントを、学会のガイドラインに沿って整理します。
急性膵炎とは——消化液が膵臓そのものを傷つける病気
膵臓(すいぞう)は、食べ物を消化する酵素を含んだ膵液(すいえき)を作って十二指腸へ送るはたらきと、インスリンなどのホルモンを血液中に出して血糖を調節するはたらきを担っています。
急性膵炎は、本来は食べ物を消化するための膵液(消化酵素)が、膵臓自身を溶かしてしまうことで起こる急な炎症です。膵臓が腫れぼったくなる程度で治まる軽いものから、膵臓が壊死(えし:組織が死んでしまうこと)したり、周りの組織に炎症が広がったりする重いものまで、程度はさまざまです。
2016年に治療を受けた患者さんを対象にした全国調査では、急性膵炎で受療した人は年間およそ7万8千人、人口10万人あたり61.8人と推計されています。
どんな症状が出るのか——みぞおちから背中への強い痛み
急性膵炎でもっとも特徴的な症状は、上腹部(おなかの上のほう)に急に起こる強い痛みと、押したときの痛み(圧痛)です。
- 腹痛——2016年の全国調査では、はじめに出た症状として腹痛が92.1%ともっとも多くみられました
- みぞおちの痛み——2013年の全国調査では、初発症状として心窩部痛(しんかぶつう:みぞおちの痛み)が71.2%ともっとも多く、次いで嘔吐、背部痛でした
- そのほかの症状——吐き気・嘔吐、背中へ広がる痛み、食欲がない、発熱など
ただし、これらの症状は急性膵炎だけに起こるものではありません。胃や腸に穴があく消化管穿孔(せんこう)、急性胆嚢炎、腸閉塞、腸の血管が詰まる病気、急性大動脈解離など、急いで治療が必要な病気でも似た痛みが出ます。痛みの原因を自分で見分けるのは難しいため、強い痛みは医療機関で確かめることが大切です。
主な原因——アルコールと胆石
日本では、アルコールと胆石が急性膵炎の二大原因です。男性ではアルコールによるもの、女性では胆石によるものが多いことが分かっています。2016年の全国調査の内訳は次のとおりです。
- 男性——アルコール性42.8%、胆石性19.8%、特発性(原因が特定できないもの)16.2%
- 女性——胆石性37.7%、特発性24.8%、アルコール性12.0%
年齢でみると、アルコール性は40代に多く、中年の男性に目立ちます。一方、胆石性は高齢の方、とくに高齢の女性に多くみられます。
胆石による膵炎は、胆嚢(たんのう)の中でできた石が胆汁の通り道(総胆管)に流れ出し、その出口にはまり込んだときに起こることがあります。
このほかにも、血液中の中性脂肪がとても高い状態(脂質異常症)、おなかのけが、膵管の生まれつきの形の違い、自己免疫、副甲状腺(上皮小体)の病気、膵臓や胆道の腫瘍などが原因になることがあります。ガイドラインでは、血液中の中性脂肪が1,000mg/dLを超えている場合、脂質異常症が原因である可能性が高いとしています。原因によって治療や再発予防の方法が異なるため、原因を調べることも診療の大切な一部です。
診断の考え方——血液検査と画像検査
日本では、厚生労働省の研究班が2008年に定めた診断基準が使われています。次の3項目のうち2項目以上を満たし、ほかの膵臓の病気や急性腹症(急な強い腹痛を起こす病気)を除外できた場合に、急性膵炎と診断します。
- 上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある
- 血中または尿中に膵酵素の上昇がある
- 超音波、CTまたはMRIで膵に急性膵炎に伴う異常所見がある
血液検査では、膵臓から出る酵素の値を調べます。膵臓に特有の酵素(膵アミラーゼ、リパーゼなど)を測るのが望ましいとされ、ガイドラインでは診断のために血中リパーゼの測定を推奨しています。測定が難しい場合は、血中アミラーゼを測ります。
画像検査では、まず超音波検査(エコー)が役立ちます。体への負担が少なく、膵臓の腫れや周りの炎症に加えて、胆石や胆管の広がりなど原因に関わる変化も確認できます。超音波などで診断がつかない場合には、CT検査を行います。
診断がついたら、原因を速やかに調べます。中でも胆石が原因かどうかは、内視鏡で胆管の出口を処置するかどうかなど治療方針に大きく関わるため、優先して確かめる点とされています。
重症化することがある——早めの受診と救急のサイン
急性膵炎は、重症度の見極めがとても大切な病気です。2016年の全国調査では、急性膵炎の23.6%が重症と判定されました。致命率(亡くなった方の割合)は急性膵炎全体で1.8%、重症では6.1%でした。
重症度は、血液検査などから点数をつける「予後因子スコア」と、造影CTの所見を用いて判定します。入院した時点では軽症でも、あとから重症化する例があります。そのためガイドラインでは、入院時、24時間以内、24〜48時間の時点で、繰り返し重症度を判定することを推奨しています。重症の場合は、診断後3時間以内に、対応できる医療機関への転送を検討するとされています。
受診の目安として、次のような症状があるときは、早めに医療機関を受診してください。
- みぞおちや上腹部の強い痛みが続く
- 痛みが背中のほうへ広がる
- 吐き気や嘔吐、発熱を伴う
- 飲酒のあとや、胆石を指摘されたことがある方で、上腹部の痛みが出た
消防庁は、おとなで次のような症状があるときは、重大な病気の可能性があるとして、ためらわずに救急車(119番)を呼ぶよう呼びかけています。
- 突然の激しい腹痛、激しい腹痛が持続する
- 血を吐く、便に血が混ざる、または真っ黒い便が出る
- 冷や汗を伴うような強い吐き気
- 意識がない、意識がおかしい(もうろうとしている)、ぐったりしている
119番に通報するか迷ったときは、救急相談窓口(#7119など)に相談することもできます。
再発を防ぐために——お酒と胆石への対策
急性膵炎は、原因が残ったままだと繰り返すことがあります。原因に合わせた対策が再発予防の中心です。
アルコールが原因の場合、日本消化器病学会の慢性膵炎診療ガイドラインは、飲酒がアルコール性急性膵炎から再発性急性膵炎、さらに慢性膵炎へと病気を進ませる危険因子であるとしています。日本人を対象とした調査では、アルコール性急性膵炎のあとに慢性膵炎へ進んだ人の割合は、完全に断酒できた場合で13.6%、量を減らしても毎日飲んでいた場合で23.3%、飲む量が変わらなかった場合で40.9%でした。急性膵炎を起こしたことがある方は、飲酒について担当医の指示を確認してください。
胆石が原因の場合、ガイドラインは、再発や胆石による合併症を防ぐために胆嚢を取る手術(胆嚢摘出術)が有用としています。年齢や全身の状態などで手術を避けた場合には、内視鏡で胆管の出口を広げる治療が再発予防に役立つとされています。
膵炎に限った話ではありませんが、飲み会の多い季節には、厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」も参考になります。同ガイドラインでは、純アルコール量(g)を「飲む量(ml)×アルコール度数(%)÷100×0.8」で求める方法を示しています。たとえばビール500ml(5%)は20gです。そのうえで、次のような工夫を挙げています。
- あらかじめ飲む量を決めてから飲む
- 飲む前や飲みながら食事をとる
- 飲酒の合間に水や炭酸水を飲む
- 1週間のうちに飲酒をしない日を設ける
また、1回の飲酒の機会に純アルコール60g以上を飲む「一時多量飲酒」は、避けるべき飲み方とされています。持病のある方や治療中の方は、主治医にご相談ください。
参考文献
- 急性膵炎診療ガイドライン2021改訂出版委員会(日本腹部救急医学会・日本肝胆膵外科学会・日本膵臓学会・日本医学放射線学会)「急性膵炎診療ガイドライン2021」(第5版・2021年)
- 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班「急性膵炎の診断基準」「急性膵炎の重症度判定基準」(2008年・急性膵炎診療ガイドライン2021所収)
- 日本消化器病学会「慢性膵炎診療ガイドライン2021」(改訂第3版・2021年)
- 日本消化器病学会(協力:日本膵臓学会)「患者さんとご家族のための慢性膵炎ガイド2023」(2023年)
- 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月)
- 消防庁「救急車を上手に使いましょう~救急車 必要なのはどんなとき?~」(令和7年10月発行)
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