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A型にかかったのに、またインフルエンザ? ― 1シーズンに2回かかる理由と、今やるべきこと【2026年2月第3週】

[2026.02.18]

この記事の要点

2026年2月第3週、インフルエンザの流行が再び加速しています。 厚生労働省の2月16日発表(第6週:2月2日〜8日)では、定点当たり報告数が全国で43.34に達し、前週の30.03から大幅に増加しました[1]。 定点医療機関からの報告数は164,744人。33の都道府県が警報レベル(定点30以上)を超えています[1]。

福岡県も例外ではなく、福岡地区の定点当たり報告数は55.36と、全国平均を大きく上回る水準が続いています[2]。

そしてこの流行の中心にいるのが、インフルエンザB型です。

当院でも、ここ数週間で明確にB型の検出割合が増えています。 その中でとくに目立つのが、**「11月〜12月にA型にかかったのに、今度はB型にかかった」**という患者さんです。

本記事では、なぜ1シーズンに2回インフルエンザにかかるのか、その機序を整理した上で、今何をすべきかを解説します。


「1回かかったから今シーズンは大丈夫」は誤解

外来で非常に多いのが、この認識です。

「先月インフルエンザやったばかりなのに、また?」 「1回かかったら免疫つくんじゃないですか?」

気持ちはよく分かります。しかし、結論から言うと1回かかっても、型が違えば免疫は効きません

A型とB型はウイルスとして「別物」

インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型、D型の4種類があり、ヒトで流行を起こすのは主にA型とB型です。

A型とB型は、ウイルス表面のタンパク質構造が根本的に異なります。 A型に感染して得られる免疫(中和抗体)は、B型のウイルスを認識できません。逆も同様です。

つまり、A型への感染で得られた免疫は、B型に対しては「存在しないのと同じ」です。

さらにA型の中にも複数の亜型がある

A型にはH1N1(いわゆるpdm09)とH3N2という2つの主要亜型があります。 今シーズンはH3N2のサブクレードK(変異株)が主流でしたが、H1N1も検出されています[3]。

したがって、理論上は以下のような組み合わせが成立します。

  • 11月にA型(H3N2)→ 2月にB型(Victoria系統)
  • 11月にA型(H3N2)→ 1月にA型(H1N1)
  • 12月にA型→ 2月にB型

実際に当院でも、シーズン中に2回のインフルエンザ罹患を確認した症例が複数出ています。


2025–2026シーズンで「2回感染」が多い構造的理由

今シーズンは、2回感染が例年以上に起こりやすい構造になっています。その理由を整理します。

① A型流行が11月に前倒しで来た

通常、A型のピークは12月後半〜1月です。 今シーズンは2025年11月にすでに全国39都道府県が警報レベルを超えるという異例の早期流行が起きました[4]。 福岡県でも12月第1週(第49週)の時点で定点65.56という極めて高い水準を記録しています[1]。

この時期にA型に罹患した人は、1月下旬〜2月にはすでに「感染後2〜3か月」が経過しています。

② B型が2月に入って急拡大している

一方、B型は例年通り〜やや早めに1月後半から増加し始め、2月に入って一気に主流化しました。 東京都のデータでは、1月26日〜2月1日の週に検出されたウイルスの約90%がB型であったと報告されています[5]。 ウェザーニュースの調査でも、全国で68.9%が「B型のみが流行」と回答しています[5]。

千葉県の迅速診断集計(第6週)でも、10,382例中9,774例(94.1%)がB型と報告されており、B型優位の傾向はさらに強まっています[6]。

③ タイムラグが「ちょうど2回目に間に合う」距離

A型ピーク(11月)→ B型ピーク(2月)。 この約3か月のタイムラグが、「A型に感染し回復した人が、免疫のないB型に再感染する」という構造を生んでいます。

東京都で1シーズンに2度の警報基準超えが発生したのは、1999年の現行統計開始以来初めてです[5]。 この「二峰性の流行」こそが、2回感染の多さを裏付けています。


インフルエンザB型の症状の特徴

「2回目」の感染でB型にかかった場合、A型と少し異なる症状パターンが出ることがあります。

消化器症状が目立つ

B型はA型と比べて、嘔吐・下痢・腹痛といった消化器症状を伴いやすいとする臨床報告があります。フランスの大規模サーベイランスデータでは、5〜14歳の小児においてB型感染者はA型感染者よりも消化器症状の頻度がやや高い傾向が示されました[7]。ただし、メタ分析では型別の消化器症状頻度に統計的に明確な差を結論づけるには至っておらず、研究間のばらつきが大きい点には留意が必要です[8]。

「お腹の風邪かと思った」という訴えで来院され、検査するとインフルエンザB型だった、というケースは当院でも少なくありません。

発熱パターンが異なることがある

A型は急激に39℃台に達することが典型的ですが、B型では37℃台後半〜38℃台で始まり、微熱が長引くパターンもあります。 ただし、39℃を超える高熱が出るB型も普通にあります。「B型は軽い」という通説は、現在の診療現場では必ずしも当てはまりません。

筋肉痛・下肢痛

B型では全身の筋肉痛に加え、とくに小児で「ふくらはぎが痛い」「歩けない」という良性急性筋炎(benign acute childhood myositis: BACM)の報告があります。BACMはインフルエンザA型・B型のいずれでも発症しますが、B型との関連がより多く報告されています[9][10]。


「また検査するんですか」という質問への答え

2回目の受診では、「また鼻に綿棒入れるんですか?」と聞かれることがあります。

答えは、検査は必要です

理由はシンプルです。 症状だけでは、インフルエンザA型・B型・新型コロナウイルス・その他の感冒を区別することはできません。 とくに今シーズンは複数のウイルスが同時流行しており、「前回A型だったから今回もインフルエンザだろう」という推測は臨床的に意味がありません。

適切な治療薬の選択(抗インフルエンザ薬の適応判断)のためにも、検査による確定が重要です。


今できること ― 2月後半の感染対策

「もうワクチンは間に合わないのでは?」という質問もありますが、現時点での現実的な対策を整理します。

基本的な感染対策の徹底

手洗い、マスク着用、換気。地味ですが、これが最も確実です。 福岡市では今シーズンの学級閉鎖等の累計が前年同日比で約7倍に達しており(2025年12月9日時点で322件)[11]、家庭内感染の防止が重要な局面にあります。

体調変化があれば早めの受診

とくに以下に該当する方は、発熱や全身倦怠感が出た時点で早めに医療機関を受診してください。

  • 65歳以上の方
  • 基礎疾患のある方(糖尿病、心疾患、呼吸器疾患、腎疾患など)
  • 妊娠中の方
  • 「今シーズンすでに1回インフルエンザにかかった」方

1回目の罹患歴は、2回目にかからない理由にはなりません。

抗インフルエンザ薬は発症48時間以内が原則

抗インフルエンザ薬の効果は、発症から48時間以内の投与で最も高くなります。 「様子を見よう」と自宅で数日粘ってからの受診では、薬の恩恵を十分に受けられない場合があります。


まとめ

  • インフルエンザA型とB型はウイルスとして「別物」であり、A型罹患後もB型に感染する
  • 2025–2026シーズンは、A型の早期流行(11月)→ B型の2月拡大という二峰性パターンにより、2回感染が構造的に起こりやすい
  • 全国の定点報告数は43.34(2月16日発表)、福岡地区は55.36と高水準が継続
  • B型は消化器症状が目立つことがあり、「お腹の風邪」との鑑別が重要
  • 「1回かかったから大丈夫」という思い込みを捨て、体調変化時は早めに受診を

ひろつ内科クリニック 福岡市博多区博多駅東2-1-23 サニックス博多ビル2階 診療時間:12:00〜21:00(火曜休診)/土日祝も診療 博多駅筑紫口 徒歩2分

ご予約はこちらから:https://wakumy.lyd.inc/clinic/hg08874


参考文献

[1] 厚生労働省「インフルエンザの発生状況について」2025/2026シーズン(令和8年2月16日発表・第6週) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou_00023.html

[2] 福岡県庁「インフルエンザの流行状況についてお知らせします(警報が継続しています)」令和8年第6週 https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/flu-2025-2026.html

[3] 国立健康危機管理研究機構(旧 国立感染症研究所)「インフルエンザウイルス分離・検出速報」2025/2026シーズン https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flutoppage/2112-idsc/jinsoku/1847-flu-jinsoku-2.html

[4] 厚生労働省「インフルエンザの発生状況について」2025年11月28日発表(第47週:11月17日〜23日) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou_00023.html

[5] ウェザーニュース「インフルエンザ患者数が急増 再び10万人超 東京で今季2度目の警報は統計史上初」2026年2月6日 https://weathernews.jp/news/202602/060176/

[6] 千葉県感染症情報センター「感染症発生動向調査」2026年第6週 https://www.pref.chiba.lg.jp/eiken/c-idsc/

[7] Caini S, et al. Clinical characteristics are similar across type A and B influenza virus infections. PLoS One. 2015;10(9):e0136186. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0136186

[8] Minodier L, et al. Prevalence of gastrointestinal symptoms in patients with influenza, clinical significance, and pathophysiology of human influenza viruses in faecal samples: what do we know? Virol J. 2015;12:215. https://doi.org/10.1186/s12985-015-0448-4

[9] Magee H, Goldman RD. Viral myositis in children. Can Fam Physician. 2017;63(5):365-368. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5429052/

[10] Hasbún MM, et al. Benign acute childhood myositis: a scoping review of clinical presentation and viral etiology. Eur J Pediatr. 2024;183(12):5031-5045. https://doi.org/10.1007/s00431-024-05786-y

[11] 福岡市保健所「インフルエンザ様疾患による学級閉鎖等の状況報告について(第43回目)」令和7年12月9日 https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/hokensho/kansensho/kansenshojoho/hodohappyou/influenzahoudou.html

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