3月〜4月に増える病気まとめ|内科医が解説する春の体調不良の原因と対策
この記事の要点
- 3月〜4月は花粉症だけでなく、感染症・自律神経の乱れ・メンタル不調が同時に増加する「体調を崩しやすい季節」である
- 花粉症はスギからヒノキへ切り替わる時期にあたり、「スギが終わったのに症状が続く」場合はヒノキ花粉への反応を疑う
- 溶連菌感染症・インフルエンザB型・新型コロナウイルスは春にも流行が続く
- 寒暖差による自律神経の乱れ(いわゆる「春バテ」)は、めまい・倦怠感・頭痛など多彩な症状を引き起こす
- 新年度の環境変化に伴うストレスは、不眠・食欲低下・意欲低下として現れることがある
- 「春だから大丈夫」は誤りであり、症状に応じた早めの受診が重要
はじめに:春は意外と体調を崩しやすい
冬のインフルエンザシーズンが終わると「感染症の季節は終わった」と考える方が多いですが、3月〜4月はむしろ複数の健康リスクが重なる時期です。
花粉症の最盛期、春に第2のピークを迎える感染症、寒暖差による自律神経の乱れ、新年度の環境変化に伴うメンタルの不調。これらが同時並行で起こるのが3月〜4月の特徴です。
この記事では、内科医の立場から「3月〜4月に増える病気」を体系的に整理し、それぞれの症状・原因・対処法を解説します。
1. 花粉症(スギ花粉〜ヒノキ花粉への移行期)
3月〜4月の花粉症の特徴
3月はスギ花粉の飛散ピークが続き、3月中旬〜下旬にかけて徐々にヒノキ花粉の飛散が本格化します。西日本ではヒノキ花粉のピークは3月下旬〜4月上旬です。
臨床上よく見られるのが「スギのシーズンが終わったはずなのに症状が続いている」というパターンです。この場合、ヒノキ花粉に反応している可能性があります。スギとヒノキはアレルゲンの構造が類似しており(共通抗原性)、スギ花粉症の方の約70〜80%がヒノキ花粉にも反応するとされています。
花粉以外の飛散物質:黄砂・PM2.5
3月〜4月は黄砂の飛来も増える時期です。黄砂は単体でも鼻・目・気道の粘膜を刺激しますが、花粉と同時に飛来すると症状が相乗的に悪化しやすいことが報告されています。
PM2.5についても、大陸からの越境汚染が春に増加する傾向があり、呼吸器疾患や花粉症の増悪因子として注意が必要です。
花粉症の治療
治療の基本は抗ヒスタミン薬とステロイド点鼻薬です。第二世代抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジン、ビラスチン、デスロラタジンなど)は眠気が少なく、日常生活への影響が小さい薬剤です。鼻閉が強い場合は抗ロイコトリエン薬を併用します。
市販薬で症状がコントロールできない場合は、処方薬への切り替えで改善が見込めるケースが多くあります。
2. インフルエンザ(B型を中心とした春の残存流行)
なぜ春にインフルエンザが残るのか
インフルエンザの流行は例年12月〜2月がピークですが、3月〜4月にかけてB型インフルエンザを中心に散発的な流行が続くことがあります。
B型インフルエンザはA型と比較して消化器症状(腹痛・下痢・嘔気)を伴うことがやや多いとされ、「お腹の風邪かと思ったらインフルエンザだった」というケースが春に見られます。また、A型の流行が早期に終息した年には、B型が3月以降に第2波として流行するパターンも報告されています。
春のインフルエンザで注意すべき点
春になると「もうインフルエンザの季節ではない」という思い込みから、検査・受診が遅れる傾向があります。発熱に加えて全身倦怠感・関節痛がある場合は、季節を問わずインフルエンザの可能性を考慮する必要があります。
抗インフルエンザ薬(オセルタミビル、バロキサビルなど)は発症から48時間以内の投与で効果が高いため、早期受診が重要です。
3. 新型コロナウイルス感染症
春の流行動向
新型コロナウイルスは季節性がインフルエンザほど明瞭ではなく、通年で感染者が発生します。2026年3月時点では、NB.1.8.1系統(通称「ニンバス」)とその亜系統株が国内の主流となっています。
現在の主流株の特徴として、強い咽頭痛が挙げられます。症状は従来と同様に発熱・咽頭痛・咳嗽・倦怠感・頭痛が中心ですが、潜伏期間は2〜7日程度と報告されています。
春のコロナ対策
5類移行後も基本的な感染対策(手洗い・換気・体調不良時の外出自粛)は有効です。春は歓迎会・花見など集団で集まる機会が増えるため、感染リスクが上昇する時期でもあります。
4. 溶連菌感染症(A群溶血性レンサ球菌咽頭炎)
春が第2の流行ピーク
溶連菌感染症は冬と「春〜初夏」の年2回、流行のピークがあります。3月〜4月は新学期の開始に伴う集団生活の再開と重なり、小児を中心に報告数が増加します。
主な症状は38〜39℃の発熱、強い咽頭痛、舌表面のイチゴ状のブツブツ(イチゴ舌)、体幹や四肢の小さな赤い発疹です。風邪と異なり、咳や鼻水を伴わないのが特徴です。
大人も感染する
溶連菌感染症は小児の病気と思われがちですが、大人にも感染します。特に子どもからの家庭内感染が多く、家族間の感染率は20〜60%とされています。
治療と注意点
ペニシリン系抗菌薬が第一選択です。治療上最も重要なのは、症状が改善しても処方された抗菌薬を最後まで飲み切ることです。途中で服薬を中止すると、リウマチ熱や急性糸球体腎炎といった非化膿性合併症のリスクが上昇します。
5. 感染性胃腸炎(ノロウイルス・ロタウイルス)
春にも続く胃腸炎
ノロウイルスの流行ピークは12月〜1月ですが、3月にかけて再び増加する二峰性のパターンを示す年があります。また、ロタウイルスは冬〜春にかけて流行し、3月〜4月に患者数が増える傾向が報告されています。
症状は嘔吐・下痢・腹痛・軽度の発熱が中心で、有効な抗ウイルス薬はなく対症療法と脱水予防が治療の柱です。
脱水への注意
春の気温上昇に伴い「喉が渇く前に脱水が進行する」ケースがあります。特に高齢者や乳幼児は嘔吐・下痢に伴う脱水が重症化しやすいため、経口補水液を活用した水分・電解質の補給が重要です。
6. 寒暖差による自律神経の乱れ(春バテ・気象病)
3月〜4月は1年で最も寒暖差が大きい
3月〜4月は日中の平均気温が約10℃上昇する一方で、朝晩の冷え込みが残る時期です。1日の気温差が7℃以上になると体温調節のために自律神経が過剰に働き、いわゆる「寒暖差疲労」が生じやすくなります。
加えて、春は低気圧と高気圧が頻繁に入れ替わる季節であり、気圧変動が自律神経をさらに乱す要因になります。
主な症状
自律神経の乱れによる症状は多彩です。倦怠感・だるさ、めまい・立ちくらみ、頭痛、肩こり、胃腸の不調(下痢・便秘)、不眠、気分の落ち込みなどが代表的です。
日本予防医学協会はこれらの症状を「春の自律神経の乱れ」と称しており、明確な疾患というよりも、寒暖差と気圧変動がもたらす複合的な不調として位置づけられています。
寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)
花粉症に似た鼻水・鼻づまり・くしゃみが出るが、目のかゆみがないという場合、寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)の可能性があります。花粉症との違いは、春に限らず寒暖差が大きい時期に症状が増悪し、アレルゲンの検査では陰性となる点です。
対策
自律神経を整えるためには、規則正しい生活リズム(特に起床時間の固定と朝食の摂取)、ウォーキングなどの軽い有酸素運動、入浴による体温調整が有効とされています。気温に応じたこまめな衣服の調節も重要です。
症状が数週間以上持続する場合や、日常生活に支障が出ている場合は、一度医療機関を受診することをお勧めします。
7. 新年度のストレスとメンタルの不調
環境変化がもたらすストレス
4月は就職・転勤・異動・入学など、生活環境が大きく変わる時期です。新しい人間関係や業務への適応にはエネルギーが必要であり、慢性的な緊張状態が交感神経の過剰な活性化を引き起こします。
4月中は緊張感で乗り切れても、環境に慣れ始めた5月に反動が一気に出る、いわゆる「五月病」につながることもあります。
注意すべき症状
不眠(寝つきが悪い・途中で目が覚める)、食欲の低下、意欲・集中力の低下、持続する倦怠感、不安感やイライラが2週間以上続く場合は、適応障害やうつ状態の初期症状である可能性を考慮する必要があります。
これらの症状は「気の持ちよう」では改善しません。早期に相談・受診することが、回復を早める最も確実な方法です。
8. その他:春に増加しやすい疾患
気管支喘息の増悪
気管支喘息は季節の変わり目に発作が増悪しやすいことが知られています。春の寒暖差・気圧変動に加え、花粉や黄砂が気道を刺激することでコントロールが悪化するケースがあります。
帯状疱疹
季節の変わり目や新年度のストレスで免疫力が低下すると、帯状疱疹を発症するリスクが上がります。体の片側に帯状の痛みや水疱が出現した場合は、早期の抗ウイルス薬投与が有効であるため、速やかに受診してください。
蕁麻疹
季節の変わり目には蕁麻疹の発症・増悪も多く見られます。花粉、寒暖差、ストレスなど複数の要因が絡み合って発症することがあり、原因の特定が困難な場合も少なくありません。
まとめ:「なんとなく体調が悪い」を放置しない
3月〜4月は、感染症・アレルギー・自律神経失調・メンタル不調が複合的に重なる時期です。
花粉症の症状だと思っていたものが実は寒暖差アレルギーであったり、風邪だと思ってい症状がインフルエンザや溶連菌感染症であったりすることは珍しくありません。春の体調不良には「季節のせいだから仕方ない」と片づけず、症状が続く場合は医療機関を受診することが重要です。
当院では、花粉症の保険診療(抗ヒスタミン薬・鼻噴霧用ステロイド薬の処方)、発熱・咽頭痛に対する検査・治療(インフルエンザ・新型コロナ・溶連菌の迅速検査対応)、自律神経の不調やストレス関連症状に対する相談を行っています。
参考文献
- 日本気象協会「2026年春の花粉飛散予測(第4報)」https://tenki.jp/pollen/expectation/
- 日本アレルギー学会「アレルギー性鼻炎・花粉症診療ガイドライン」
- 厚生労働省「インフルエンザQ&A」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
- 国立感染症研究所「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは」https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/340-group-a-streptococcus.html
- 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html
- 日本予防医学協会「春の不調に関係がある"寒暖差疲労"とは」https://www.japa.org/tips/temperature_difference_fatigue/
- 国立感染症研究所「全国のゲノムサーベイランスによる系統別検出状況」
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