Bell麻痺と顔面神経痛は、そもそも別の病態です
Bell麻痺と顔面神経痛は、そもそも別の病態です
[2026.01.16]
「顔が動かしにくい」「顔が痛い」「ピリピリする」
これらは一見似ていますが、関与する神経も原因も異なることが多い症状です。
顔面の症状を理解するうえで重要なのは、
麻痺=運動神経の障害
痛み=感覚神経の障害
という大原則です。
顔の運動を司るのは「顔面神経(第7脳神経)」
Bell麻痺とは
Bell麻痺は、顔面神経(第7脳神経)単独の末梢性麻痺です。
主な特徴は以下の通りです。
- 片側の表情筋が動かしにくくなる
- 目が閉じにくい、口角が下がる
- 額のしわ寄せができない
- 味覚障害や耳の違和感を伴うことがある
**重要なのは「痛みは主症状ではない」**という点です。
違和感や重だるさはあっても、強い神経痛が前面に出る病気ではありません。
原因については、
- ウイルス再活性化(単純ヘルペスウイルスなど)
- 神経浮腫による絞扼
が関与すると考えられています。
顔の「痛み」を司るのは「三叉神経(第5脳神経)」
一方、顔の感覚(痛み・触覚)を支配しているのは三叉神経です。
三叉神経は3つの枝に分かれています。
- 眼神経(V1):額・目の周囲
- 上顎神経(V2):頬・上顎
- 下顎神経(V3):下顎・咀嚼筋
顔面神経痛とは何か
一般に「顔面神経痛」と呼ばれているものの多くは、
実際には三叉神経痛、あるいは三叉神経領域の痛みです。
特徴は、
- ピリッとした電撃痛
- 触れる・話す・洗顔で誘発される
- 痛みは強いが、顔は動く
つまり、痛いけれど麻痺はない、というのが典型です。
帯状疱疹が絡むと、話がややこしくなります
帯状疱疹(特に顔面領域)の特徴
帯状疱疹は、感覚神経に潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化です。
顔面では、
- 三叉神経領域の帯状疱疹
- 顔面神経領域の帯状疱疹(Ramsay Hunt症候群)
が問題になります。
Ramsay Hunt症候群の場合
この場合、
- 顔面神経麻痺(Bell麻痺に似る)
- 強い耳痛・顔面痛
- 耳介や外耳道の水疱
が同時に出現することがあります。
つまり、
- 麻痺(顔面神経)
- 痛み(感覚神経)
が同時に存在するため、症状が複雑になります。
「麻痺がある=Bell麻痺」「痛い=顔面神経痛」ではありません
整理すると以下のようになります。
主症状 | 主に関与する神経 | 代表疾患 |
|---|---|---|
顔が動かない | 顔面神経(運動) | Bell麻痺 |
顔が痛い | 三叉神経(感覚) | 三叉神経痛 |
麻痺+強い痛み | 複数神経 | Ramsay Hunt症候群 |
ピリピリ残る痛み | 感覚神経 | 帯状疱疹後神経痛 |
顔の症状は「どの神経がやられているか」で考える必要があります。
まとめ
- Bell麻痺は「顔面神経の運動麻痺」が本体
- 顔面神経痛の多くは「三叉神経由来の痛み」
- 帯状疱疹が絡むと、麻痺と痛みが混在することがある
- 「顔の症状」は一括りにせず、神経ごとに考える必要がある
顔は神経が密集している分、症状の見た目以上に中身は複雑です。
麻痺なのか、痛みなのか、あるいはその両方なのか。
この切り分けが、その後の評価や治療方針を左右します。
参考文献(エビデンス)
- 日本顔面神経学会(編). 顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版(第2版). 金原出版
- 日本ペインクリニック学会. 神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第3版(2026)
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※2026年9月23日 訂正:参考文献の表記を確認し、誤りを修正しました。