熱中症患者が過去最多に!その背景と対策を探る
近年、夏になると「熱中症で救急搬送」といったニュースが頻繁に報じられるようになりました。実際に、2024年の夏は、熱中症による救急搬送者数が過去最多を記録しました。この背景には、気象の変化だけではなく、社会構造の変化や個人の生活習慣も関係しています。
なぜ熱中症患者がこれほど増えているのかをデータに基づいて解説し、私たちができる具体的な対策についても紹介します。
熱中症患者数は本当に増えているのか?
総務省消防庁の統計によれば、2024年5月から9月にかけて、全国で熱中症によって救急搬送された人数は97,578人にのぼり、これは調査開始以来で最多となりました。これは、前年比で約20%増加したことになり、明らかに「熱中症リスクが高まっている」と言える状況です。
特に注目すべきは、搬送者のうち約半数が65歳以上の高齢者である点です。高齢者は体温調節機能が低下しており、喉の渇きを感じにくいため、気づかないうちに脱水が進行するリスクがあります。
熱中症患者が増えている主な背景
1. 地球温暖化と極端な気象の影響
日本では近年、「観測史上最高気温」が記録される日が珍しくなくなっています。猛暑日(最高気温が35℃以上の日)の日数も増加傾向にあり、これが熱中症の発症リスクを確実に押し上げています。
2. 高齢化の進行
日本の総人口に占める65歳以上の割合は、2023年時点で29.1%に達しました。高齢者の一人暮らしも多く、室内にエアコンがあっても使用を控えるケースもあり、重症化しやすい傾向があります。
3. 屋内発症の増加
熱中症というと「屋外での活動中に起こるもの」と思われがちですが、実際には発症場所の約4割が住居内です。エアコンをつけずに我慢する、換気のために窓を開けっぱなしにする、といった行動が背景にあります。
4. 暑熱順化の不足
特に梅雨明け直後に気温が急上昇すると、まだ体が「暑さに慣れていない(暑熱順化していない)」状態で夏本番を迎えることになり、熱中症の発症リスクが高くなります。
今日からできる熱中症対策
● エアコンの活用をためらわない
室温が28℃を超えたら、迷わず冷房を使用しましょう。高齢者や子どもには特に重要です。
● 水分補給は「喉が渇く前に」
水や麦茶、経口補水液などで、こまめに水分補給をしましょう。アルコールやカフェインは利尿作用があり、逆に脱水を招くことがあります。
● 暑熱順化の習慣化
夏が近づいてきたら、日中に軽い運動や散歩を行い、汗をかく機会を意識的につくることで体を暑さに慣らしておきましょう。
● 見守りと声かけ
高齢の家族や隣人がいる場合は、こまめに声をかけ、エアコンの使用や水分補給を促すことが命を守る行動になります。
おわりに
熱中症は予防が可能な疾患です。しかし、気づかないうちに進行し、命に関わる重症化も少なくありません。気象変動や高齢化という社会的背景を踏まえながら、一人ひとりが正しい知識と予防策を身につけることが、これからの夏を安全に過ごす鍵になります。
参考文献・エビデンス
-
総務省消防庁「令和6年 熱中症による救急搬送状況」
-
環境省「熱中症予防情報サイト」
-
国立環境研究所「日本の気候変動に関する最新評価2023」
-
厚生労働省「高齢者の健康管理と熱中症対策に関する通知」
ひろつ内科クリニック受診予約はこちらから