大人のリンゴ病(伝染性紅斑)とは?~子どもの病気では済まされない注意点~
「リンゴ病」と聞くと子どもの病気という印象が強いかもしれませんが、実は大人がかかると重症化することもある感染症です。最近では、地域によって成人の集団発症も報告されており、医療現場では注意喚起がなされています。
リンゴ病の原因と感染経路
リンゴ病の正式名称は「伝染性紅斑」。**ヒトパルボウイルスB19(Parvovirus B19)**というウイルスが原因で、飛沫感染や接触感染によって広がります。
潜伏期間は4~14日、発疹が出る頃にはウイルス排出は収束しており、感染力は弱まっています。
大人がかかった場合の症状
子どもでは頬の発疹が目立つ「赤いほっぺ」が有名ですが、大人の場合は発疹よりも関節痛や全身症状が強く出ることが多いのが特徴です。
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微熱、頭痛、倦怠感
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手首や膝、足首などの左右対称性関節痛
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発疹(成人では出ないこともある)
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腫れや痛みで生活に支障をきたすケースも
多くは自然軽快しますが、数週間から数か月以上、関節症状が続く場合もあり、関節リウマチとの鑑別が必要なこともあります。
特に注意が必要なケース
① 妊娠中の感染
妊婦が初感染すると胎児の重篤な貧血や胎児水腫を引き起こすことがあります。
感染リスクが高い保育士・教師・医療職は注意が必要です。抗体価の確認が推奨されることもあります。
② 免疫不全者・溶血性疾患患者
B19ウイルスは赤血球前駆細胞を障害するため、再生不良性貧血や発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)などの基礎疾患を持つ方では、命に関わる無形成発作を起こすことがあります。
検査・診断と治療
血清学的検査(IgM抗体)、PCR検査で確定診断が可能です。
治療は対症療法が中心ですが、免疫不全者や妊婦感染例では入院管理や免疫グロブリン製剤の投与が検討されます。
当院の対応
当院では、リンゴ病が疑われる成人患者様に対して、
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必要に応じた血液検査(パルボB19 IgM)
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関節痛への消炎鎮痛剤の処方
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妊婦さんへの紹介先連携
など、迅速な対応体制を整えております。
関節痛が続く、周囲にリンゴ病の流行がある、といった方はお気軽にご相談ください。
参考文献・エビデンス
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Heegaard ED, Brown KE. Human parvovirus B19. Clin Microbiol Rev. 2002;15(3):485-505.
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Saitoh A, et al. Parvovirus B19 infection in pregnancy. Nihon Rinsho. 2013;71(8):1389–1393.
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Young NS, Brown KE. Parvovirus B19. N Engl J Med. 2004;350:586–597.
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厚生労働省 感染症発生動向調査(IDWR)リンゴ病:疫学情報・2023年報告
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日本産科婦人科学会「妊婦に対するパルボウイルス感染対策指針」
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