マンジャロ(チルゼパチド)の副作用とは?
頻度・対処法・膵炎リスクまで徹底解説
週1回の注射で高い血糖降下・体重減少効果が得られる「マンジャロ(一般名:チルゼパチド)」は、糖尿病や肥満治療の最前線にある薬剤です。
その一方で、副作用についても十分に理解し、安全に使用することが大切です。
本記事では、最新の大規模研究を含む信頼性の高いデータをもとに、副作用の種類・頻度・対処法、そして注目される膵炎との関係まで詳しく解説します。
1. 主な副作用とその頻度(SURPASS試験データより)
マンジャロの副作用は主に消化器系の症状が中心です。以下に主要な副作用とその発生頻度を示します。
副作用名 | 発生頻度(目安) | コメント |
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悪心(吐き気) | 約12〜18% | 初回または増量時に多く、時間とともに軽快しやすい |
下痢 | 約10〜13% | 水分補給を重視 |
便秘 | 約7〜11% | 食物繊維や水分摂取の見直しが有効 |
食欲減退 | 約8〜10% | 減量効果との関連がある |
嘔吐 | 約4〜6% | 高用量でやや頻度上昇 |
胆石・胆道疾患 | まれ(<2%) | 急激な体重減少に関連することがある |
膵炎(急性膵炎) | ごく稀(<0.5%) | 詳細は後述 |
アレルギー反応 | ごく稀 | 発疹、浮腫、呼吸困難に注意 |
多くの副作用は用量依存性があり、2.5mgから開始して段階的に増量することで回避または軽減できます。
2. 副作用が起きやすいタイミング
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初回投与から1〜2週目に消化器症状(悪心・下痢)が出やすい
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用量を増やした直後(例:5mg → 10mg)にも一時的な副作用が見られることがあります
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多くは4〜6週間以内に自然軽快する傾向があります
3. 症状別・副作用の対処法
◆ 悪心・嘔吐
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食事は少量頻回食にする
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油っこいもの・冷たい飲み物は避ける
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必要に応じてメトクロプラミドやドンペリドンなどの制吐剤を使用
◆ 下痢
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経口補水液(OS-1など)で脱水を予防
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整腸剤(ビオフェルミン、ラックビーなど)を併用
◆ 便秘
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水分摂取を増やし、食物繊維を意識
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酸化マグネシウムなどの便秘薬を適宜併用
4. 膵炎リスクについての最新知見【2025年更新】
◆ 背景と従来の懸念
以前は、GLP-1受容体作動薬やチルゼパチドが膵炎を引き起こす可能性があると懸念されていました。しかし、最新の大規模研究ではその見解が大きく変わりつつあります。
◆ 最新エビデンス
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Dewi YPら(2025年, Am J Gastroenterol)
全米127万人の保険診療データを用いた多施設共同研究により、GLP-1受容体作動薬を使用した患者では、急性膵炎の再発率・重症化率がいずれも有意に低下していました。
特に膵炎既往のある患者でも安全に使用できる可能性があると示唆されています。 -
SURPASS試験群(1〜5)およびSURMOUNT-1試験
マンジャロ群での膵炎の発生率は、プラセボやセマグルチドと同等あるいは低い水準であり、有意なリスク上昇は認められていません。 -
Lancet Diabetes Endocrinol(2023)メタ解析
GLP-1系薬全体として、「膵炎リスクの増加を裏付ける明確な因果関係は認められない」とされています。
これらの結果から、マンジャロは膵炎リスクを上げるどころか、むしろ改善に寄与する可能性すらあると考えられ始めています。
◆ ただし注意すべき症状はある
以下のような症状が現れた場合は、膵炎の兆候の可能性があるため速やかに医療機関を受診してください。
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上腹部〜背部にかけての持続的な強い痛み
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吐き気・嘔吐が止まらない
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発熱、黄疸、食欲不振
5. 医師からのアドバイス
マンジャロは、適切に使えば極めて効果的な治療薬ですが、副作用や体調の変化に注意を払うことも重要です。
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副作用は一過性でコントロール可能なものが大半
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最小用量から開始し、増量は慎重に
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症状が気になる場合は、我慢せず医師に相談することが安全に治療を継続する鍵
6. 参考文献(Evidence Level:Grade A)
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Frías JP, et al. NEJM. 2021;385(6):503-515.
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Jastreboff AM, et al. NEJM. 2022;387(3):205-216.
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Dewi YP, et al. Am J Gastroenterol. 2025;120(5):654–663.
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Ludvik B, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2023;11(1):10-22.
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日本糖尿病学会「2型糖尿病治療ガイド 2024」
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PMDA「マンジャロ皮下注」電子添文(2024)
まとめ
マンジャロは次世代の糖尿病・肥満治療薬として大きな可能性を持っています。
副作用は一時的なものが多く、きちんと対応すれば安全に治療を継続できます。
副作用が気になる、膵炎の既往があるなど、不安な点があれば当院にご相談ください。患者さん一人ひとりに合わせた適応や安全な投与法を一緒に考えていきます。
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