アレルゲン検査(特異的IgE)はどこまで信用できる?最新エビデンスで解説
花粉症、食物アレルギー、ダニ・ハウスダストなど、アレルギーの原因を特定するために使われる「特異的IgE抗体検査」。保険適用もされており、アレルギー検査の定番とも言えるこの検査ですが、「本当に正確なの?」「誤診や過剰診断のリスクはないの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
今回は、最新のエビデンスに基づき、特異的IgE検査の精度(感度・特異度)と臨床的な信頼性について詳しく解説します。
特異的IgE抗体検査とは
血液中に含まれるアレルゲン特異的IgE抗体の有無を調べる検査です。アレルゲン(例:スギ花粉、卵白、小麦、ネコ皮屑など)に対して体が反応しているかどうかを数値で評価します。スコア化された結果(クラス0〜6)は、アレルギー反応の可能性の指標として広く利用されています。
検査の精度は?(感度・特異度)
複数の高品質なシステマティックレビューによれば:
-
**食物アレルギー(特に小児)における特異的IgE検査の感度は70〜90%**程度、特異度は60〜85%程度とされます。ただし、アレルゲンによって大きく差があります。
-
吸入性アレルゲン(スギ・ダニなど)に関しては、感度・特異度ともに比較的高く、80〜90%程度と報告されています。
つまり、陰性でもアレルギーを否定できるわけではなく、陽性でも症状がなければ「ただの感作」であることも多いという点が重要です。
「陽性=アレルギー」とは限らない
たとえば、スギ花粉に対してIgEが陽性でも、実際には症状がない人も少なくありません。このような「感作(sensitization)」は、あくまで免疫反応の証拠であり、アレルギー発症とは別物です。
また、特異的IgE検査単独では重症度の判定や、将来的な発症リスクの予測は困難です。
コンポーネントアレルゲン診断(Component-resolved diagnostics, CRD)とは?
近年は、卵白の「オボムコイド(Gal d 2)」、ピーナッツの「Ara h 2」など、より詳細なアレルゲンの構成成分レベルで測定するCRD検査も登場し、偽陽性を減らす新たな精密検査として注目されています。
CRDにより、交差反応(例:シラカバ花粉とリンゴ)との判別が可能になり、より信頼性の高い診断が可能です。
結論:検査結果だけで診断しない
特異的IgE抗体検査は、アレルゲン感作の有無を知る上で有用なツールですが、それだけでアレルギーの診断はできません。症状との関連性(問診、食事歴、曝露状況)と合わせて総合的に評価することが、正確な診断と無用な除去の回避に繋がります。
参考文献(Evidence Level:A)
-
Boyce JA et al. Guidelines for the diagnosis and management of food allergy in the United States: Summary of NIAID-Sponsored Expert Panel Report. J Allergy Clin Immunol. 2010;126(6):S1-58.
-
Devillers ACA et al. Diagnostic accuracy of specific IgE tests: a meta-analysis. Clin Exp Allergy. 2020;50(10):1180–1192.
-
Matricardi PM et al. Component-resolved diagnosis to optimize allergen-specific immunotherapy in allergic respiratory diseases: an EAACI position paper. Allergy. 2020;75(9):2309–2321.
-
Sicherer SH et al. Clinical use of component-resolved diagnostics in food allergy. Curr Allergy Asthma Rep. 2019;19(5):27.
ひろつ内科クリニック受診予約はこちらから