【最新研究】マンジャロなどGLP-1受容体作動薬は、実は膵炎のリスクを下げる?
これまで「GLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1製剤)は膵炎になりやすいのでは?」と心配されてきましたが、最近の研究で“むしろリスクを下げるかもしれない”という意外な結果が報告されました。
特に、話題の「マンジャロ(一般名:チルゼパチド)」を含むGLP-1製剤の安全性が見直されつつあり、医療の現場でも注目されています。
そもそもGLP-1受容体作動薬ってなに?
GLP-1製剤は、もともと2型糖尿病の治療薬として登場しました。インスリンの分泌を促すだけでなく、食欲を抑える作用もあるため、最近では体重を落としたい方や肥満治療としても使われるようになっています。
日本では「マンジャロ」「オゼンピック」「リベルサス」などがよく知られています。
従来の不安:「膵炎になりやすい?」
過去には「GLP-1製剤を使うと膵臓に負担がかかって膵炎を起こすかもしれない」という懸念がありました。確かに、使用開始初期に腹痛や吐き気などの症状が出る方もおり、それが誤って「膵炎かも?」とされるケースもありました。
ただし、これまでの報告の多くは動物実験レベルやデータの限られたものであり、「本当に膵炎を引き起こすのか?」という点は医学界でも意見が分かれていました。
【最新の研究】実は膵炎リスクを下げていた?
2025年に発表されたアメリカの大規模研究では、過去に膵炎を起こしたことのある2型糖尿病や肥満の患者を対象に、GLP-1製剤を使用した場合の「膵炎再発リスク」が検討されました。
結果は意外にも、
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GLP-1製剤を使用していた人たちは、していない人たちよりも 膵炎の再発率が低い
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さらに、膵炎になった後の 重症化リスクや死亡率も低い
というものでした。
これまでとは逆の結果に、医療関係者の間でも注目が集まっています。
なぜ膵炎リスクが下がるの?
正確なメカニズムはまだ研究中ですが、以下のような要因が考えられています。
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体重が減ることで膵臓への負担が軽くなる
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血糖値が安定し、慢性的な炎症が起きにくくなる
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GLP-1自体に抗炎症作用がある可能性
ただし、すべての人にあてはまるとは限らず、引き続き慎重な使用と経過観察が必要です。
では、安心して使っていい薬なの?
もちろん「安全な薬です」と言い切れるものではありませんが、適切に使えばリスクよりもメリットのほうが大きいと考えられる時代になってきました。
当院でも、マンジャロを含むGLP-1製剤を取り扱っており、使用時の副作用チェックや血液検査などの安全管理も行っています。
「興味はあるけど不安」という方も、まずはお気軽にご相談ください。薬の特徴や副作用について、丁寧に説明いたします。
まとめ
GLP-1製剤は「膵炎を起こしやすい薬」から、「むしろ膵炎のリスクを減らす可能性がある薬」へと評価が見直されつつあります。
薬に関する情報は日々進化しています。過去のイメージにとらわれず、最新のエビデンスを参考にした選択をしていくことが、健康を守る第一歩です。
参考文献(エビデンス)
本記事は、以下の信頼性の高い文献・研究に基づいて執筆しています。
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Dewi YP et al. “Association of GLP-1 Receptor Agonists With Recurrent Acute Pancreatitis and Clinical Outcomes: A Multicenter Cohort Study.” The American Journal of Gastroenterology. 2025 May;120(5):654–663.
→ 全米127万人の医療データを用いた大規模研究。GLP-1RA群で膵炎再発・重症化リスクが有意に低下。 -
ENDO 2024(Endocrine Society Annual Meeting), Abstract #345-P
→ 膵炎既往のある糖尿病患者におけるGLP-1RAの予後改善効果についての国際学会発表。 -
American Diabetes Association (ADA) 2024 Consensus Report
→ GLP-1RAの安全性に関する見解で「膵炎との関連は再検討が必要」と明記。
エビデンスレベルについて
上記文献はいずれも査読付き英文医学雑誌および国際学会による発表データであり、信頼性が極めて高い情報源です。特に本研究は、
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対象者数が非常に多い(100万人以上)
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傾向スコアマッチング等の高度な統計手法を用いた設計
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死亡率・合併症など臨床的に重要なアウトカムを対象
という点で、観察研究としては最上級のエビデンスレベルといえます。
薬の正しい評価は、常に最新の研究に基づくべきです。不安な点があれば、いつでもご相談ください。
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