過換気症候群で「手足がしびれる」のはなぜか?
過換気症候群で「手足がしびれる」のはなぜか?
[2026.01.12]
過換気症候群では、
「息が苦しい」「動悸がする」と同時に
手足がしびれる・指が固まるといった症状がよくみられます。
このしびれは、神経や血管の病気ではなく、
呼吸による血液の変化で説明できます。
① 過換気で起きているのは「酸素不足」ではない
不安や緊張、パニック状態になると、
- 呼吸が速くなる
- 深く吸いすぎる
という状態が続きます。
このとき体内では、
- 酸素が足りなくなる
→ わけではありません
実際に起きているのは、
- 二酸化炭素(CO₂)が出すぎている状態
です。
② CO₂が減ると血液がアルカリ性に傾く
CO₂は血液の中で「酸」として働いています。
そのため、
- CO₂が過剰に排出される
→ 血液のpHが上昇
→ 呼吸性アルカローシス
という状態になります。
この「アルカローシス」が、しびれの核心です。
③ カルシウムの働きが一時的に低下する
血液がアルカリ側に傾くと、
- カルシウムが血液中のタンパクと結合しやすくなり
- 神経に作用する“遊離カルシウム”が減少
します。
※ 血液検査での「総カルシウム値」は正常なことが多く、
機能的にだけ低下しているのがポイントです。
④ 神経が過敏になり、しびれが出る
カルシウムは、神経の興奮を抑える役割を持っています。
それが減ることで、
- 神経が過剰に興奮しやすくなる
- 少しの刺激でピリピリ感が出る
結果として、
- 手足のしびれ
- 口の周りのピリピリ感
- 指がつる、固まる感じ
が起こります。
⑤ 血管収縮も、しびれを強める
CO₂が低い状態では、
- 末梢の血管が収縮しやすくなり
- 手足の血流が一時的に低下
これも、しびれ感を強める要因になります。
まとめ:しびれが起こるまでの流れ
不安・緊張
↓
過換気
↓
CO₂低下
↓
血液がアルカリ性に傾く
↓
イオン化カルシウム低下
↓
神経が過敏になる
↓
手足のしびれ・こわばり
大事なポイント
- 脳や神経が壊れているわけではありません
- 酸素不足でもありません
- 多くは一時的で、自然に回復します
この理屈を知っているだけでも、
症状への不安はかなり軽くなります。
なぜ呼吸を整えると楽になるのか
ゆっくり呼吸をすると、
- CO₂が体内に戻る
- 血液のpHが正常化
- カルシウムの働きが回復
結果として、
しびれは自然に消えていきます。
過換気症候群の対応で
「安心させる」「呼吸を整える」ことが重要なのは、
ちゃんとした生理学的な理由があるのです。
参考文献(エビデンス)
- Gardner WN. The pathophysiology of hyperventilation disorders. Chest. 1996;109(2):516–534.
- Rose C, et al. Effects of acute respiratory alkalosis on ionized calcium and neuromuscular excitability. Clin Sci. 1990;78:11–16.
- 日本呼吸器学会. 過換気症候群の診断と対応(総説).
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