過換気症候群で「手足がしびれる」のはなぜか?
過換気症候群では、
「息が苦しい」「動悸がする」と同時に
手足がしびれる・指が固まるといった症状がよくみられます。
このしびれは、神経や血管の病気ではなく、
呼吸による血液の変化で説明できます。
① 過換気で起きているのは「酸素不足」ではない
不安や緊張、パニック状態になると、
-
呼吸が速くなる
-
深く吸いすぎる
という状態が続きます。
このとき体内では、
-
酸素が足りなくなる
→ わけではありません
実際に起きているのは、
-
二酸化炭素(CO₂)が出すぎている状態
です。
② CO₂が減ると血液がアルカリ性に傾く
CO₂は血液の中で「酸」として働いています。
そのため、
-
CO₂が過剰に排出される
→ 血液のpHが上昇
→ 呼吸性アルカローシス
という状態になります。
この「アルカローシス」が、しびれの核心です。
③ カルシウムの働きが一時的に低下する
血液がアルカリ側に傾くと、
-
カルシウムが血液中のタンパクと結合しやすくなり
-
神経に作用する“遊離カルシウム”が減少
します。
※ 血液検査での「総カルシウム値」は正常なことが多く、
機能的にだけ低下しているのがポイントです。
④ 神経が過敏になり、しびれが出る
カルシウムは、神経の興奮を抑える役割を持っています。
それが減ることで、
-
神経が過剰に興奮しやすくなる
-
少しの刺激でピリピリ感が出る
結果として、
-
手足のしびれ
-
口の周りのピリピリ感
-
指がつる、固まる感じ
が起こります。
⑤ 血管収縮も、しびれを強める
CO₂が低い状態では、
-
末梢の血管が収縮しやすくなり
-
手足の血流が一時的に低下
これも、しびれ感を強める要因になります。
まとめ:しびれが起こるまでの流れ
大事なポイント
-
脳や神経が壊れているわけではありません
-
酸素不足でもありません
-
多くは一時的で、自然に回復します
この理屈を知っているだけでも、
症状への不安はかなり軽くなります。
なぜ呼吸を整えると楽になるのか
ゆっくり呼吸をすると、
-
CO₂が体内に戻る
-
血液のpHが正常化
-
カルシウムの働きが回復
結果として、
しびれは自然に消えていきます。
過換気症候群の対応で
「安心させる」「呼吸を整える」ことが重要なのは、
ちゃんとした生理学的な理由があるのです。
参考文献(エビデンス)
-
Gardner WN. The pathophysiology of hyperventilation disorders. Chest. 1996;109(2):516–534.
-
Rose C, et al. Effects of acute respiratory alkalosis on ionized calcium and neuromuscular excitability. Clin Sci. 1990;78:11–16.
-
日本呼吸器学会. 過換気症候群の診断と対応(総説).
ひろつ内科クリニック受診予約はこちらから
https://wakumy.lyd.inc/clinic/hg08874
花粉症市販薬を徹底比較⑥【完全版】 OTCで治らない花粉症 ― どこからが医療介入か。市販薬の限界を“重症度と作用機序”で整理する ― (2026年2月13日) 花粉症市販薬を徹底比較⑤【完全版】 総合鼻炎薬という名の“配合カプセル”を解体する ― パブロン鼻炎カプセルSα・コンタック鼻炎Zの成分構造を読む ― (2026年2月13日) 花粉症市販薬を徹底比較④【完全版】 眠くならない市販薬はどれか ― 「眠気」と「集中力低下」を薬理学で整理し、具体的な選び方を提示する ― (2026年2月13日) 花粉症市販薬を徹底比較③【完全版】 鼻づまりに強い市販薬はどれか ― ナザールスプレーとプソイドエフェドリンの功罪を整理する ― (2026年2月13日) 花粉症市販薬を徹底比較②【完全版】 フルナーゼ点鼻薬とナザールαARは本当に有効か ― 炎症カスケードから理解する点鼻ステロイドの位置づけ ― (2026年2月13日)
シリーズ最終回は、結論を明確にします。
市販薬(OTC)は、成分そのものは医療用と共通のものも多く、軽症〜中等症の一部では合理的に使えます… ▼続きを読む
ここまでで整理したように、
・抗ヒスタミン単剤
・点鼻ステロイド
・血管収縮薬
は、それぞれ作用機序が明確です。
一方、市販… ▼続きを読む
花粉症の市販薬を選ぶとき、毎年必ず問題になるのが「眠気」です。
ただし、眠気は単に「眠くなる/ならない」だけではありません。
抗ヒスタミ… ▼続きを読む
第1回・第2回で整理した通り、
抗ヒスタミン薬はヒスタミン経路のみ
点鼻ステロイドは炎症全体
に作用します。
しかし、
「今この瞬… ▼続きを読む
第1回では第二世代抗ヒスタミン薬を整理しました。
しかし日本の鼻アレルギー診療ガイドラインでは、
中等症以上の第一選択は「点鼻ステロイド… ▼続きを読む
