逆流性食道炎とは何か
逆流性食道炎とは何か
[2026.01.24]
逆流性食道炎は、胃内容物(主に胃酸)が食道内へ逆流することで、症状や粘膜障害を生じる状態を指します。
日本消化器病学会では、内視鏡でびらんを認めるものだけでなく、**症状を主体とする病態も含めて「GERD(胃食道逆流症)」**として捉えられています。
GERDは以下の2つに大別されます。
- 逆流性食道炎(びらん性GERD)
内視鏡検査で食道粘膜にびらんや炎症を認めるもの - 非びらん性胃食道逆流症(NERD)
症状はあるが、内視鏡では明らかな粘膜障害を認めないもの
日本ではNERDの割合が比較的高いことが知られており、症状があっても内視鏡では異常が見つからないケースは珍しくありません。
逆流性食道炎の主な症状
典型的な症状
逆流性食道炎でよく知られている症状には、以下があります。
- 胸やけ
- 呑酸(酸っぱいものが上がってくる感じ)
- みぞおち付近の不快感
- 食後や前かがみ時の症状増悪
これらは胃酸の逆流による刺激が関与していると考えられています。
非典型症状(食道外症状)
逆流性食道炎では、胸やけ以外の症状が前面に出ることもあります。
- 慢性的な咳
- のどの違和感、声がれ
- 胸痛(心疾患と区別が必要な場合あり)
- 喉の詰まり感
特に20〜40代では、「胃の病気」という認識が持たれにくく、症状と逆流性食道炎が結びつかず受診が遅れることがあります。
原因と病態生理
逆流性食道炎は、単一の原因で起こる疾患ではありません。
以下の要素が組み合わさって発症すると考えられています。
下部食道括約筋(LES)の機能低下
食道と胃の境目には、胃内容物の逆流を防ぐ「下部食道括約筋」が存在します。
この筋肉の締まりが弱くなると、胃酸が食道へ逆流しやすくなります。
食道クリアランスの低下
通常、逆流した胃酸は唾液や蠕動運動によって速やかに食道から排除されます。
この機能が低下すると、食道粘膜が胃酸にさらされる時間が長くなるとされています。
胃酸分泌と粘膜防御のバランス
胃酸の量そのものだけでなく、食道粘膜の防御機構とのバランスが重要とされています。
生活背景との関連
肥満、食事内容、食後すぐに横になる習慣、姿勢などが、逆流を助長する要因として報告されています。
ただし、これらはあくまで関連因子であり、特定の生活習慣だけが原因と断定できるものではありません。
診断の考え方(日本の診療実態)
症状に基づく診断
日本では、典型的な症状があり、他の重篤な疾患が否定的な場合、症状ベースで診断・治療を開始することも一般的です。
内視鏡検査の役割
内視鏡検査は、
- びらんの有無の確認
- 他疾患(腫瘍、感染症など)の除外
といった目的で行われます。
一方で、内視鏡で異常が見られないからといって、逆流性食道炎が否定されるわけではありません。
ピロリ菌との関係
日本ではピロリ菌感染率の低下に伴い、胃酸分泌が保たれた人が増えており、
その背景の中でGERDが増加していることが報告されています。
治療の基本方針
生活指導について
食事内容や姿勢の工夫などが提案されることがありますが、
生活指導のみで症状が十分に改善しないケースも少なくありません。
薬物療法
逆流性食道炎の治療では、胃酸分泌を抑制する薬剤が用いられます。
- PPI(プロトンポンプ阻害薬)
- P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)
- H2受容体拮抗薬(補助的に使用されることあり)
これらは、症状や経過に応じて選択されます。
いずれも「必ず効く」「完全に治る」といった保証がある治療ではありません。
長期経過と注意点
逆流性食道炎は、慢性的に経過することがある疾患です。
- 症状が軽減しても自己判断で治療を中断すると再燃することがある
- 症状が変化した場合は、他疾患の評価が必要になることがある
胸痛、嚥下困難、体重減少などを伴う場合は、早めの医療機関受診が推奨されます。
まとめ
逆流性食道炎は、症状の出方が多様で、年齢によっても受け止め方が異なります。
20〜40代でも決して珍しい疾患ではなく、「よくある不調」として見過ごされやすい点が特徴です。
気になる症状が続く場合は、自己判断せず、医師による評価を受けることが重要です。
参考文献
- 日本消化器病学会. 胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン
- 日本消化器内視鏡学会. GERDの診断と治療
- Kinoshita Y, et al. Gastroesophageal reflux disease in Japan. J Gastroenterol.
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