若い人に多いEBウイルス・サイトメガロウイルス感染 ― 医学的エビデンスに基づく徹底解説
はじめに
発熱や咽頭痛、リンパ節腫脹など、風邪やインフルエンザに似た症状を呈するウイルス感染の中で、若い世代に多いのが**EBウイルス(Epstein-Barr Virus: EBV)とサイトメガロウイルス(Cytomegalovirus: CMV)**です。
どちらもヘルペスウイルス科に属し、一度感染すると体内に潜伏し、生涯にわたり共存する特徴があります。
1. EBウイルス感染(伝染性単核球症)
特徴
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初感染は小児期に多く、不顕性感染が大半。
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思春期〜青年期に初めて感染すると、**伝染性単核球症(Infectious Mononucleosis, IM)**を発症することがあります。
主な症状
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発熱(38℃以上が数日〜2週間持続)
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咽頭痛(扁桃炎様の強い痛み)
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頸部リンパ節腫脹
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肝脾腫(脾腫破裂リスクに注意)
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強い倦怠感
検査
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血液検査で異型リンパ球の出現(>10%が目安)
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EBV特異抗体(VCA IgM陽性、EBNA抗体陰性で急性感染を示す)
治療
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特異的抗ウイルス薬はなく、支持療法が基本。
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アモキシシリン系抗菌薬投与により皮疹が出やすいことが知られています。
2. サイトメガロウイルス感染
特徴
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成人の約60〜80%が既感染とされる。
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初感染は軽症〜不顕性が多いが、青年期の感染ではEBVと類似した伝染性単核球症様症候群を呈することがあります。
主な症状
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発熱、倦怠感、リンパ節腫脹
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咽頭痛はEBVほど強くない
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肝機能異常が目立つことが多い
検査
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血液検査で異型リンパ球が出現することもある
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CMV IgM抗体陽性やPCRで診断
治療
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健康な若年者は自然軽快することが多い
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免疫抑制状態(移植患者、HIV感染者など)では重症化することがあり、ガンシクロビルなどの抗ウイルス薬を使用
3. EBVとCMVの違い(まとめ)
| 項目 | EBウイルス | サイトメガロウイルス |
|---|---|---|
| 主症状 | 高熱・咽頭痛・リンパ節腫脹 | 発熱・倦怠感・肝障害 |
| 咽頭痛 | 強い | 軽度〜なし |
| 脾腫 | しばしばあり(破裂リスク) | 稀 |
| 検査 | VCA IgM陽性、EBNA陰性 | CMV IgM陽性、PCR |
| 治療 | 支持療法 | 支持療法(免疫不全では抗ウイルス薬) |
4. 合併症・長期的影響
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EBV:脾腫による破裂リスク、稀に神経合併症(脳炎、Guillain-Barré症候群)、長期的には悪性リンパ腫との関連が知られる。
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CMV:免疫健常者では軽症だが、免疫抑制下では肺炎・網膜炎・肝炎など重篤化する。
まとめ
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若い世代の発熱・咽頭痛・倦怠感には、EBウイルスやCMV感染が隠れていることがあります。
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両者は症状が似ていますが、EBVは咽頭痛とリンパ節腫脹が強く、CMVは肝機能障害が目立つという違いがあります。
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いずれも基本は支持療法で経過観察しますが、免疫抑制状態の患者では重症化リスクに注意が必要です。
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参考文献
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Luzuriaga K, Sullivan JL. "Infectious mononucleosis." N Engl J Med. 2010;362:1993-2000.
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Dunmire SK, Hogquist KA, Balfour HH. "Infectious mononucleosis." Curr Top Microbiol Immunol. 2015;390:211-240.
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Rafailidis PI, et al. "Severe cytomegalovirus infection in apparently immunocompetent patients: a systematic review." Virol J. 2008;5:47.
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日本感染症学会「EBウイルス感染症・サイトメガロウイルス感染症の診療ガイドライン」2021年改訂版
