秋の花粉症:ブタクサやヨモギに要注意
花粉症というと春のスギやヒノキを思い浮かべる方が多いですが、実は夏の終わりから晩秋にかけて「秋の花粉症」が存在します。原因となるのは、身近な雑草であるブタクサ・ヨモギ・カナムグラです。これらは都市部の空き地や河川敷などに多く生え、気づかないうちに症状を引き起こします。
1. 秋の花粉の種類と特徴
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ブタクサ
8月下旬〜10月にかけて飛散。1本の株が数百万個の花粉を生産するとされ、アメリカでは「最強のアレルゲン」と呼ばれるほど。日本でも都市部の空き地に多く、患者数が増加しています。 -
ヨモギ
9月を中心に飛散。草地や道路沿いに多く、地域によってはブタクサと並んで主要な原因花粉です。 -
カナムグラ
北海道から九州に広く分布。9〜10月に飛散し、症例報告も増えています。
これらは風媒花で、花粉は数キロ先まで飛ぶため、直接植物のそばに行かなくても症状が出ることがあります。
2. 秋の花粉症の症状
典型的な症状は、春の花粉症とほぼ同じです。
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透明でさらさらとした鼻水
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発作的なくしゃみ
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鼻づまり
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目のかゆみ、充血、涙目
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のどのイガイガ感や咳
特に「風邪と間違いやすい」のがポイントです。秋の気温変化による体調不良やウイルス感染と重なることもあり、「長引く風邪だと思っていたら実は花粉症だった」というケースも多くみられます。
3. 秋の花粉症が増えている背景
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都市部での雑草増加:空き地や道路沿いにブタクサ・ヨモギが繁殖。
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大気汚染との相乗効果:ディーゼル排気粒子がアレルゲン作用を増強することが報告されています。
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地球温暖化:植物の生育期間が延び、飛散時期が長期化していると考えられています。
4. 検査と診断
花粉症かどうかを確認するには、血液検査で「特異的IgE抗体」を測定する方法があります。ブタクサ・ヨモギ・カナムグラなどの項目を調べることで原因を特定できます。
5. 治療法
現在のエビデンスに基づく治療の第一選択は「鼻噴霧用ステロイド薬」です。抗ヒスタミン薬や点眼薬を併用することで、症状を効果的にコントロールできます。
重症例では以下の治療も検討されます:
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ロイコトリエン受容体拮抗薬(特に鼻づまりに有効)
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舌下免疫療法(スギ花粉に対しては広く普及、ブタクサに対しては一部研究段階)
6. 日常生活での予防策
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草むらや河川敷に近づかない
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マスク・眼鏡で花粉をブロック
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帰宅後は衣服や髪を払ってから室内に入る
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洗濯物は室内干しにする
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室内では空気清浄機を使用
7. 秋の花粉症チェックリスト
以下の項目に複数当てはまる場合、秋の花粉症の可能性があります。
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透明な鼻水が長引いている
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1日何度も連続してくしゃみが出る
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目がかゆく、充血している
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河川敷や空き地の近くを通ると症状が強くなる
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家族に花粉症の人がいる
まとめ
秋の花粉症は春と同様に日常生活に大きな支障をきたします。風邪と見分けにくいこともあり、症状が長引くときは医師に相談することが大切です。早めの受診で、快適な秋を過ごすための治療が可能になります。
参考文献(エビデンス)
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Okubo K, et al. Japanese guidelines for allergic rhinitis 2020. Allergol Int. 2020;69(3):331-345.
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Bousquet J, et al. Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma (ARIA) 2020. Allergy. 2020;75(3):589-601.
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中村陽一 他. 秋季花粉症の現状と対策. アレルギー. 69巻, 2020.
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D’Amato G, et al. Urban air pollution and climate change as environmental risk factors of respiratory allergy. Environ Pollut. 2015;203:871-881.
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