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熱中症と点滴 —— 輸液が必要になるとき

熱中症と点滴 —— 輸液が必要になるとき

[2025.06.03]

毎年夏になると話題になる「熱中症」。水分補給が大切とは言うものの、重症化したときには何が必要になるのでしょうか。体を冷やす治療とともに重要になるのが、静脈からの輸液(点滴)です。

熱中症の重症度分類と治療の基本

日本救急医学会の「熱中症診療ガイドライン2024」では、熱中症は以下のように分類されます(要点のみ抜粋):

分類

症状

対応

I度(軽度)

めまい、立ちくらみ、筋肉のこむら返りなど

涼しい場所での安静と冷却、経口での水分・電解質の補給

II度(中等度)

頭痛、嘔吐、倦怠感、集中力や判断力の低下

医療機関での診察。冷却と水分・電解質の補給(経口摂取が難しいときは点滴)

III度(重度)

中枢神経症状(意識障害、けいれんなど)、肝・腎機能障害、血液凝固異常のいずれか

入院のうえ、冷却を含めた集学的治療を考慮

IV度(最重症)

深部体温40.0℃以上かつ高度の意識障害(GCS 8以下)

積極的な冷却(Active Cooling)を含めた集学的治療

 

熱中症の治療における輸液の位置づけ

熱中症の治療で輸液がどう位置づけられているかについては、以下の資料が参考になります。

Casa DJ et al. National Athletic Trainers’ Association Position Statement: Exertional Heat Illnesses. (J Athl Train. 2015)

  • 運動に伴う重症の熱中症(労作性熱射病)では、首までの冷水浸漬による迅速な冷却が最も有効な冷却法とされ、医療者がいる場合は搬送より冷却を優先するよう推奨されています。また、医療者がいれば、水分補給と循環の維持を目的に点滴を行うことができるとされています。熱疲労では、輸液が必要な場合や回復が速やかでない場合(治療開始から30分以内に回復しないなど)に補液を始め、医師に引き継ぐとされています。

日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン2024

  • II度では医療機関での診察が必要とされ、経口摂取が難しいときは点滴で水分と電解質を補給するとされています。III度では入院のうえ冷却を含めた集学的治療を考慮し、最重症のIV度ではそれを行うとされています。

なぜ「輸液」なのか?

  • 静脈から直接、水分と電解質を補給できる
  • 循環血漿量を即座に増加させる
  • ショックの予防・改善に不可欠
  • ナトリウム・カリウムなどの電解質バランスを速やかに補正可能

経口補水だけで様子をみてよいのは、意識がはっきりしていて自分で十分に飲める軽症の場合です。頭痛や嘔吐、強いだるさがあるなど「少し危ないかも」と感じた時点で、医療機関での診察が必要です。

現場ではどう対応するか

当院では、以下の基準で輸液を判断しています:

  • 意識レベルが低下している
  • 吐き気や嘔吐で経口摂取が難しい
  • 脈拍が速く、末梢冷感がある
  • 中等度以上の熱中症が疑われる

これらに該当すれば、即時の生理食塩水または乳酸リンゲル液による輸液を開始します。


まとめ

熱中症は「水分を取っていれば大丈夫」な病気ではありません。中等度以上の熱中症で口から十分に飲めない場合などには、点滴による輸液が治療の大切な柱の一つになります。重症の場合は、すばやく体を冷やす治療とあわせて医療機関での治療が必要です。

気になる症状があれば、ためらわずに医療機関へ。熱中症対策は、正しい知識と迅速な対応が命を守ります。

※2026年10月2日 訂正:熱中症の重症度分類・治療に関する記載と参考文献を見直し、修正しました。

 

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