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気温40℃を超える日本の猛暑、命を守るために知っておくべき医学知識

気温40℃を超える日本の猛暑、命を守るために知っておくべき医学知識

[2025.07.31]

2025年の夏、日本全国でかつてない猛暑が続いています。

7月には国内200地点以上で35℃以上の「猛暑日」が観測され、埼玉・熊谷では39℃台、兵庫・丹波では41.2℃を記録しました。気象庁も「災害級の暑さ」と繰り返し警戒を呼びかけています。

このような極端な高温環境では、単なる「暑さ対策」だけでは不十分です。

体の中で何が起こっているのか?

どうすれば重症化を防げるのか?

医師の立場から、科学的根拠に基づく“命を守る行動指針”をお伝えします。


1. 高温が人体に与える影響

気温が35℃を超えると、体温調節機能は急激に負担を受け始めます

人の体は体温が上昇すると汗をかき、気化熱で体温を下げようとしますが、

  • 湿度が高いと汗が蒸発せず放熱できない
  • 高齢者はもともと発汗量が少ない
  • 持病や薬の影響で体温調節がうまく働かない人も多い

こうした背景があるため、気温と体温の乖離が小さい環境では「隠れ熱中症」や「室内熱中症」が増加します。

さらに、体温が38℃を超えると中枢神経への影響が出始め、40℃を超えると臓器障害・意識障害・けいれんなどが起こることがあります。


2. 熱中症の分類と対処法(厚労省・日本救急医学会より)

熱中症は以下の3段階に分類されます。

分類

症状

対応

軽症(Ⅰ度)

めまい、立ちくらみ、筋肉のこむら返り、発汗

涼しい場所で休む、水・塩分補給

中等症(Ⅱ度)

頭痛、吐き気、虚脱感、判断力低下

医療機関での点滴治療などが必要

重症(Ⅲ度)

意識障害、けいれん、高体温、肝腎機能障害

緊急搬送。命に関わる状態

 

重要なのは、「汗をかかなくなった」「会話が成り立たない」などの異常があれば、すぐに医療機関に連絡することです。


3. 水分補給だけでは足りない?“低ナトリウム血症”というリスク

汗をかいたあとに水ばかりを大量に飲むと、体内のナトリウム濃度が下がる「希釈性低ナトリウム血症」という状態が起こることがあります。

これは以下のような症状を引き起こします:

  • 軽度:頭痛、吐き気、むくみ、全身倦怠
  • 重度:意識障害、けいれん、呼吸停止

米国の研究では、猛暑日における救急搬送のうち「低ナトリウム血症」が一定割合を占めていることが確認されており、特に高齢者や女性に多く見られます(Hyponatremia and ambient temperature: a systematic review, 2023)。

このため、水分補給時には**“塩分の摂取”もセットで必要**です。

梅干し、味噌汁、経口補水液などが有効です。


4. 特に注意すべき人たち

以下に該当する方は、通常よりも熱中症や電解質異常のリスクが高くなります。

  • 65歳以上の高齢者(皮膚感覚と発汗機能の低下)
  • 高血圧・心不全・糖尿病などの持病がある方
  • 利尿薬、精神薬、降圧薬などを内服している方
  • 屋外での作業従事者
  • 小さなお子さま(体温調節機能が未発達)

これらの方は、日中の外出は極力控えること、室内でもエアコン使用をためらわないこと、こまめな体調チェックが必要です。


5. 今すぐできる“命を守る”チェックリスト

□ エアコンの温度を28℃以下に設定しているか

□ のどが渇く前に、こまめな水分・塩分補給をしているか

□ 1時間あたり200〜300mlを目安に分けて飲んでいるか

□ 汗をかいたら塩分補給を意識しているか

□ 一人暮らしの高齢者に連絡・訪問を行っているか

□ 夜間も熱帯夜対策をしているか(寝室の室温チェック)


6. 最も重要なのは「過信しないこと」

「自分は大丈夫」「まだ若いから平気」といった油断が、最も危険です。

熱中症や低ナトリウム血症は誰にでも起こりうる疾患であり、重症化すれば命に関わります。

日常生活の中で気づかないうちに進行するケースも多く、初期症状が曖昧なことも特徴です。

とくに「屋内での熱中症」は年々増加しており、冷房をつけない生活スタイルは危険です。


まとめ:今年の夏は「命を守る行動」を

2025年の日本は、気象庁も認める過去最悪レベルの高温が続いています。

「ただの暑さ」では済まされないこの夏、

  • 医学的に正しい水分と塩分の補給
  • エアコン・冷却・遮熱などの環境整備
  • 早めの受診と周囲への声かけ

これらが、自分と大切な人の命を守る最善の手段です。

おかしいな?と感じたときには、遠慮なく医療機関にご相談ください。

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