口角炎が治らない原因と正しい治療法|カンジダ・栄養不足・受診の目安を内科医が解説
この記事の要点
- 口角炎は唇の両端(口角)に生じる炎症で、亀裂・赤み・かさぶた・痛みを伴い、口を開けるたびに裂けるのが特徴です
- 最も多い原因はカンジダ菌(真菌)と黄色ブドウ球菌の混合感染で、約60%を占めるとされています
- 栄養欠乏(鉄・亜鉛・ビタミンB群)が背景にあるケースが全体の約25%を占め、血液検査で判明することがあります
- 市販のステロイド軟膏を自己判断で塗ると、カンジダ感染の場合はかえって悪化するため注意が必要です
- 2週間以上治らない場合や繰り返す場合は皮膚科を受診し、原因に応じた適切な治療を受けることが重要です
口角炎とは
口角炎(こうかくえん)とは、上唇と下唇が合わさる部分(口角)に炎症が起きる皮膚疾患です。英語ではangular cheilitis(アンギュラー・カイライティス)、フランス語由来でperlèche(ペルレーシュ)とも呼ばれます。
口角は構造的に唾液が溜まりやすく、食事や会話のたびに引っ張られる部位です。そのため一度炎症が起きると治りにくく、慢性化・再発しやすいのが特徴です。子どもから高齢者まで幅広い年齢層に発症し、人口の約0.7%に見られるとする報告があります。
典型的な症状としては、口角の発赤・腫脹、亀裂(ひび割れ)、びらん(ただれ)、かさぶたの形成、口を開けた際の痛みなどが挙げられます。
口角炎の原因
口角炎の発症には複数の因子が関与しており、単一の原因で説明できないケースが多いのが実情です。大きく分けると、感染性の原因、栄養欠乏、機械的・物理的要因、全身疾患の4つに分類できます。
感染性の原因(最多)
口角炎の原因として最も頻度が高いのは、カンジダ菌(Candida albicans)と黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による感染です。両者の混合感染が約60%、カンジダ単独が約20%、黄色ブドウ球菌単独が約20%とする報告があります。
カンジダ菌は口腔内に常在する真菌(カビの一種)であり、健康な状態では免疫機構によって制御されています。しかし免疫力の低下や、口角に唾液が長時間溜まることで皮膚のバリア機能が破壊されると、カンジダ菌が過剰増殖し炎症を引き起こします。カンジダが原因の場合、白い苔状の病変を伴うことがあり、両側性に発症する傾向があります。
なお、口唇ヘルペス(単純ヘルペスウイルス)が口角付近に生じた場合も、口角炎と似た症状を呈することがあるため、鑑別が重要です。
栄養欠乏(約25%)
口角炎全体の約25%は栄養欠乏が関与しているとされています。特に関連が深い栄養素は以下の通りです。
鉄欠乏は口角炎の原因として見落とされがちですが、鉄欠乏性貧血の患者では口角炎と萎縮性舌炎が最も多い口腔内所見として報告されています。鉄欠乏があると唾液中のトランスフェリン(抗菌タンパク質)が減少し、カンジダ菌の増殖を許しやすくなると考えられています。
ビタミンB群の欠乏も重要な原因です。ビタミンB2(リボフラビン)欠乏症の典型的な症状として口角炎は古くから知られています。そのほかB6、B12、葉酸(B9)の欠乏でも口角炎が生じることがあります。
亜鉛欠乏も口角炎を引き起こすことが知られています。亜鉛欠乏では口角炎に加え、脱毛・下痢・皮膚炎などの症状を伴うことがあります。
偏食、過度なダイエット、吸収不良症候群(セリアック病など)、炎症性腸疾患がある方は栄養欠乏のリスクが高くなります。
機械的・物理的要因
義歯(入れ歯)の不適合は高齢者における口角炎の代表的な原因です。咬合高径(上下の歯が噛み合う高さ)が低下すると、口角の皮膚が折れ込んで唾液が溜まりやすくなり、慢性的な浸軟(ふやけ)からカンジダ感染に至ります。
唇を舐める癖も口角炎を悪化させる重要な因子です。唾液が蒸発する際に皮膚の水分も奪われ、乾燥と浸軟を繰り返すことでバリア機能が破壊されます。特に小児に多く見られます。
そのほか、口呼吸による口唇乾燥、マスクの長期着用による蒸れと摩擦、歯列矯正装置による刺激なども原因となることがあります。
接触性皮膚炎
リップクリーム・口紅・日焼け止め・歯磨き粉・マウスウォッシュなどに含まれる成分に対するアレルギー性接触皮膚炎が口角炎の原因となることがあります。ニッケル(歯科金属)に対するアレルギーも報告されています。原因が疑われる場合は皮膚科でのパッチテストが有用です。
全身疾患・薬剤
糖尿病、HIV感染症、シェーグレン症候群、炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)などの全身疾患が背景に隠れていることがあります。
薬剤では、イソトレチノイン(ビタミンA誘導体)、吸入ステロイド、長期間の抗菌薬使用(口腔内常在菌叢の変化によるカンジダ増殖)などが口角炎のリスク因子として知られています。
口角炎の症状と経過
口角炎の症状は軽症から重症まで幅があります。
軽症の場合は口角のわずかな発赤や乾燥感にとどまりますが、進行すると亀裂が深くなり、食事や会話のたびに裂けて出血・痛みを伴います。カンジダ感染を伴う場合は白い苔状の付着物が見られることがあり、細菌感染が主体の場合は膿疱や蜂蜜色の浸出液を伴うことがあります。
多くの場合は両側性(左右対称)に発症しますが、片側のみに生じる場合は局所的な外傷、口唇ヘルペス、まれに梅毒性丘疹の可能性があり、注意が必要です。
適切な治療により1〜2週間で改善することが多いですが、基礎疾患や原因が取り除かれないと再発を繰り返す傾向があります。
口角炎の治療
原因の特定が最も重要
口角炎の治療において最も大切なのは「なぜ口角炎が起きているのか」を正しく診断することです。感染が原因なのか、栄養欠乏なのか、接触皮膚炎なのかによって治療法がまったく異なります。
皮膚科では、問診に加えて必要に応じてKOH検鏡(真菌の顕微鏡検査)、培養検査、パッチテスト、血液検査(血算・鉄・フェリチン・ビタミンB群・亜鉛など)を行い、原因を特定した上で治療方針を決定します。
カンジダ感染に対する治療
カンジダが原因の場合は抗真菌薬の外用が第一選択です。ミコナゾール、クロトリマゾール、ケトコナゾールなどのアゾール系抗真菌薬のクリームを1日2〜3回、1〜2週間塗布するのが標準的な治療です。ミコナゾールにはグラム陽性菌に対する抗菌活性もあるため、混合感染にも対応しやすいとされています。
炎症が強い場合は、抗真菌薬にヒドロコルチゾンなどの弱めのステロイドを短期間併用することがあります。難治性の場合は抗真菌薬の内服が検討されます。
細菌感染に対する治療
黄色ブドウ球菌感染が確認された場合は、フシジン酸やムピロシンなどの抗菌外用薬が使用されます。黄色ブドウ球菌が原因の口角炎では、鼻腔内にも菌が定着していることが多く、再発予防のために鼻腔内の除菌が行われることがあります。
栄養欠乏に対する治療
血液検査で鉄欠乏、ビタミンB群欠乏、亜鉛欠乏が確認された場合は、それぞれの栄養素の補充が必要です。栄養欠乏が原因の口角炎は、外用薬だけでは改善しません。
鉄欠乏性貧血に対する鉄剤の内服で口角炎が完全に消失し、再発しなかったとする報告もあり、原因となる欠乏症を治療することの重要性が示されています。
バリア保護
原因を問わず、ワセリンなどの保護剤で口角の皮膚を物理的に保護し、唾液による浸軟を防ぐことは基本的なケアとして有用です。
自己判断で市販薬を使うリスク
口角炎に対して自己判断で市販のステロイド軟膏を塗ることは、注意が必要です。カンジダ感染が原因の場合、ステロイドは局所の免疫を抑制してかえってカンジダの増殖を助長し、症状を悪化させる可能性があります。
口唇ヘルペスが口角に生じている場合も同様で、ステロイドによりウイルスの増殖が促進されるおそれがあります。
市販のビタミンB2製剤(チョコラBBなど)は、ビタミン欠乏が原因の場合には有効ですが、感染が主因の口角炎には効果が限定的です。「ビタミンを飲んでいるのに治らない」という場合は、感染症の治療が必要な可能性があります。
受診の目安
以下のいずれかに当てはまる場合は、皮膚科の受診をお勧めします。
2週間以上改善しない口角炎、市販薬(リップクリーム・ビタミン剤など)を使っても治らない場合、繰り返し再発する場合、口角だけでなく口腔内にも白い苔状の病変がある場合(口腔カンジダ症の合併が疑われます)、片側のみに生じている場合、全身倦怠感・貧血症状・体重減少など他の症状を伴う場合。
日常生活でできる予防策
口角炎の予防には、発症のきっかけとなる因子を減らすことが基本です。
唇を舐める癖を意識的にやめること、ワセリンやリップクリームで口角の保湿を習慣化すること、ビタミンB群(B2・B6・B12)・鉄分・亜鉛を意識した食事を心がけること(レバー・卵・納豆・緑黄色野菜・赤身肉・魚介類など)、義歯が合っていない場合は歯科で調整を受けること、吸入ステロイドを使用している方は使用後に必ず口をすすぐこと、口呼吸の改善(鼻炎がある場合は耳鼻科での治療も検討)。
これらを日常的に意識することで、口角炎の発症や再発のリスクを下げることが期待できます。
まとめ
口角炎は「口の端が切れただけ」と軽視されがちですが、背景にカンジダ感染、栄養欠乏(鉄・ビタミンB群・亜鉛)、全身疾患が隠れていることがあり、原因に応じた治療が不可欠です。自己判断でステロイド軟膏を塗ると悪化するケースもあるため、2週間以上治らない場合や繰り返す場合は皮膚科を受診してください。
当院では口角炎の初期評価や、栄養欠乏が疑われる場合の血液検査(鉄・フェリチン・ビタミンB群・亜鉛など)に対応しております。検査結果に応じて、皮膚科への紹介や栄養補充の治療を行いますので、気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。
参考文献
- Federico JR, Basehore BM, Zito PM. Angular Cheilitis. StatPearls. Updated 2025.
- Ayesh MH. Angular cheilitis induced by iron deficiency anemia. Cleve Clin J Med. 2018;85(8):581-582.
- Park KK, Brodell RT, Helms SE. Angular cheilitis, part 1: local etiologies. Cutis. 2011;87(6):289-295.
- Park KK, Brodell RT, Helms SE. Angular cheilitis, part 2: nutritional, systemic, and drug-related causes and treatment. Cutis. 2011;88(1):27-32.
- 日本医真菌学会. 侵襲性カンジダ症に対するマネジメントのための臨床実践ガイドライン. 2021.
- 奥野哲朗. 口唇炎・口角炎. 埼玉県皮膚科医会.
ひろつ内科クリニック受診予約はこちらから https://wakumy.lyd.inc/clinic/hg08874