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プラセンタとは何か ― 医学的エビデンスに基づく徹底解説

[2025.09.03]

はじめに

美容や更年期症状の改善を目的に「プラセンタ注射」「プラセンタサプリ」が広く知られるようになりました。
しかし「実際にどんな成分で、どんな効果があるのか?」は曖昧なまま広がっているのが現状です。
今回は、プラセンタ(胎盤由来成分)について医学的エビデンスをもとに整理します。


1. プラセンタとは

プラセンタ(placenta)は胎盤のこと。

  • ヒト胎盤エキス(日本ではラエンネック・メルスモンが医薬品として承認)

  • ブタ・ウマなど動物由来の抽出物(サプリメント・化粧品成分として使用)

胎盤には、アミノ酸、ペプチド、成長因子、ビタミン、ミネラルなど多様な物質が含まれています。


2. 日本での医薬品としての承認

ヒト胎盤エキス注射薬は以下の効能・効果で承認されています。

  • ラエンネック:慢性肝疾患における肝機能の改善

  • メルスモン:更年期障害・乳汁分泌不全

美容目的での使用は承認されておらず、いわゆる「適応外使用」となります。


3. エビデンスに基づく効果

肝機能改善

  • 日本の多施設臨床試験では、慢性肝炎・肝硬変患者における肝機能マーカー(ALT・AST)の改善効果が報告されています。

更年期症状の改善

  • ランダム化比較試験(RCT)で、更年期女性の自覚症状(ホットフラッシュ、倦怠感、睡眠障害など)の軽減に寄与したとされています。

美容・抗疲労効果

  • 動物由来プラセンタや健康食品に関する研究はありますが、大規模RCTでの明確な有効性証明は不足しています。

  • 「美白」「アンチエイジング」といった効果は基礎研究レベルの報告にとどまり、臨床的に確立しているとは言えません。


4. 安全性と副作用

  • 医薬品のプラセンタ注射は比較的安全とされていますが、注射部位の痛み、発疹、発熱などの副作用が報告されています。

  • ヒト胎盤エキスは献血ができなくなる点に注意が必要です(感染症リスクを完全に否定できないため)。

  • サプリ・化粧品の安全性は製品ごとに異なり、品質管理が十分でない場合もあります。


5. 自律神経やストレスとの関連

  • 一部の研究でプラセンタ注射により**自律神経のバランス改善(交感・副交感の調整)**が報告されています。

  • ただしエビデンスレベルは限定的であり、「自律神経失調症に効く」と断定できる段階ではありません。


まとめ

  • プラセンタは胎盤由来の成分で、日本では肝機能改善・更年期障害に限って医薬品承認されている。

  • 美容や疲労回復への効果は研究途上で、確立したエビデンスは不足している。

  • 安全性は比較的高いが、副作用や献血制限には注意が必要。

  • 科学的に言えることは「一部の疾患では効果が確認されているが、美容目的での効果は未確立」ということ。


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参考文献

  • 厚生労働省 医薬品承認情報(ラエンネック、メルスモン)

  • Moriyama M, et al. "Placental extract improves liver function in patients with chronic liver disease." Hepatol Res. 2008.

  • Nishizawa H, et al. "Clinical effects of human placental extract on menopausal symptoms." Maturitas. 2011.

  • 日本産科婦人科学会「更年期障害の管理と治療ガイドライン」2023年改訂版

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