【私の原点】ラーメン住吉亭──獣の香りに包まれて、27年通い続ける一杯
27年前、私は福岡に移り住んだ。 それまで何度となく“とんこつラーメン”と呼ばれるものを口にしてきたが、 福岡で出会ったのは、“本場のとんこつ”という名の別次元の食べ物だった。 ──その衝撃を与えてくれたのが、ラーメン住吉亭だった。
獣の香りと、シャバ系スープの魔力
まず、店の前に立った時点で香るのは、強烈な獣臭。 これは豚骨が骨の髄まで煮込まれた証。 好みは分かれるかもしれないが、私にとっては帰ってきた感覚すらある。
そして丼が出され、スープを一口。 住吉亭のスープは、シャバシャバ系。 乳化はほとんどしておらず、さらりとしていながら芯にグッとくる骨の旨味がある。 これぞ、福岡・博多のクラシックとんこつの真髄。 飲みやすいのに、軽くない。攻めてくるのに、飽きない。
ネギのインパクトは“量”だけじゃない
住吉亭のネギはただ多いだけではない。 白ネギを大胆に、荒くカットしたものが盛られている。 青ネギの繊細さとは真逆の、豪快かつ野性味のある風味とシャキシャキ感。
しかも、有料追加ネギは別丼で“山”のように盛られてくる。 丼に投入すると、もはやネギ料理にラーメンが添えられている状態。 「ネギ多め」は不可。真のネギ好きだけが辿り着ける境地、それがネギ追加。
にんにくクラッシュの儀式──私の開戦合図
住吉亭のにんにくは刻みではない。 丸ごとが3玉、有料100円で提供され、専用クラッシャーで“へずる”スタイル。 この“へずり”が、ラーメンとの真剣勝負の始まりを告げる。
私は初手で1玉、必ず投入。 シャバ系スープが一気にパンチを帯び、口内が戦場と化す。 さらにもう1玉は後半に、3玉目は替玉後の味変用。 にんにくを段階的に使い分けることで、最後まで戦える設計。
高菜は“最初の白ごはん”で立ち上がる
そして、忘れてはならないのが卓上の辛子高菜。 これはただの無料トッピングではない。 発酵のコク・辛味・油の香りが絶妙に調和した逸品。
私の流儀はこうだ。
高菜は、まず“ごはん”に乗せて食べる。
この一膳が、住吉亭のプロローグ。 その後、ラーメンを食べ進め──そして替玉後に、スープへ高菜を投入。 ここでスープがピリ辛とんこつに劇的変化し、ラストスパートのギアが入る。
これが、“住吉亭完全体”の作法である。
店内はストイックな“黙食道場”
住吉亭にBGMはいらない。 必要なのは、湯切りの音、箸の音、スープをすする静かな闘志。
店内はカウンターとテーブル合わせて16席。 誰もが黙って、淡々とラーメンと向き合っている。 "この空気もまた“味の一部"であり、私にとっては禅に近い時間でもある。
店舗情報(2025年6月時点)
項目 | 内容 |
---|---|
店名 | ラーメン住吉亭 |
住所 | 福岡市博多区博多駅南5丁目5-1 |
電話 | 092-411-6868 |
営業時間 | 11:00〜17:00(L.O.16:50) |
定休日 | 日曜 |
駐車場 | あり(2台) |
支払い | 現金のみ(カード・電子マネー不可) |
席数 | 16席(カウンター12/テーブル4) |
スープ | 非乳化・シャバ系とんこつスープ |
ネギ | 白ネギ荒切り、ネギ追加(100円)は別皿山盛り |
にんにく | 有料(100円)、クラッシャーで自分で潰す形式、3玉付き |
高菜 | 無料卓上トッピング。ごはん・ラーメンどちらも最強コンビ |
【院長からひとこと】
住吉亭は、私の博多生活の起点であり、帰る場所でもあります。 27年間、何十杯、いや百を超えて食べてきたはずなのに、飽きるどころか恋しくなる。
本場のとんこつの底力を感じたい人、食べ物で本能を揺さぶられたい人へ。 ぜひ一度、**この“凶暴にして優しい一杯”**を味わってみてください。
あなたも、次に住吉亭の暖簾をくぐるのは、今日かもしれません。