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【最新研究】マンジャロはPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)にも効く?~ダイエット以外の「うれしい副産物」~

[2025.06.10]

最近話題のGLP-1受容体作動薬「マンジャロ(チルゼパチド)」ですが、実はダイエット以外にも意外な効果が報告されているのをご存じでしょうか?

そのひとつが、「PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)への有効性」です。
PCOSは20~30代の女性に多く、月経不順・排卵障害・にきび・体毛の増加など、さまざまな悩みの原因になる病気。
当院にも「体重が落ちにくくて月経が戻らない」「婦人科でピルを出されたけど、根本的に治るわけじゃない」といった悩みを抱える方が来院されます。

今日は、このPCOSに対して**マンジャロがどのように働くのか?どんなデータがあるのか?**を、医師の視点からわかりやすく解説していきます。


そもそもPCOSってどんな病気?

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、卵巣の中に小さな卵胞がたくさんできてしまい、排卵がうまくいかなくなる病気です。
症状としては、以下のようなものがあります:

  • 月経不順・無月経

  • にきび・体毛の増加

  • 不妊

  • 肥満(特にお腹周り)

  • インスリン抵抗性(=血糖が下がりにくくなる)

根本的な原因はまだ解明途中ですが、「ホルモンバランスの乱れとインスリン抵抗性」が深く関係していると考えられています。


マンジャロが効く理由

チルゼパチド(マンジャロ)は、「GLP-1」と「GIP」という2つのホルモンの働きを模倣する新しいタイプの注射薬です。
これらのホルモンは、食後の血糖コントロールやインスリン分泌に関係するのですが、実はこれがPCOSにも良い影響をもたらします。

ポイントは以下の2つ:

✅ インスリン抵抗性の改善

PCOSの多くの方は「インスリンが効きにくい体質」になっています。これが、卵巣のホルモン分泌に悪影響を与え、排卵がうまくいかなくなっているのです。
→ マンジャロはこの「インスリンの効きにくさ」を改善することで、排卵サイクルやホルモンバランスを整える助けになります。

✅ 体重減少によるホルモン正常化

肥満を伴うPCOSでは、脂肪組織からのホルモンも乱れを助長しています。
→ マンジャロは体重を減らすことで、卵巣の状態も改善されやすくなります


実際にあった使用例:海外の臨床データより

2023年にバングラデシュで行われた臨床観察研究では、PCOS患者56名にチルゼパチドを投与した結果、次のような変化が見られました:

  • 体重:9.5%減少(平均36.1 → 32.6kg/m²)

  • 空腹時血糖・HbA1cが有意に改善

  • 月経不順が85.7% → 32.1%に改善

  • 卵巣の嚢胞所見が89.3% → 41%に減少

これだけでなく、「にきびや多毛の軽減、感情の安定」を実感した例も報告されています。

また、アメリカでは婦人科医のあいだで「低用量チルゼパチドでも、PCOS症状が改善した」との報告もあり、現場での期待が高まっています。


どんな人に向いている?

以下のようなPCOS患者さんには、マンジャロのようなGLP-1/GIP作動薬が特に適していると考えられます:

  • 肥満を伴うPCOS(BMI 25以上)

  • インスリン抵抗性が強く、内服薬(メトホルミンなど)では不十分な方

  • 月経不順や排卵障害が続いている方

  • ピルなどホルモン治療に抵抗がある、または副作用がある方


注意点と当院での対応

  • 保険適応外です(自由診療)

  • 吐き気、胃もたれ、便秘などの副作用があることがあります

  • 使用するには婦人科的なスクリーニングも必要なため、婦人科との連携が望ましいケースもあります

当院では、糖代謝に強い内科医の視点から全身状態を評価し、安全に導入できるよう配慮しています。


最後に:ダイエットのその先にある“思わぬ恩恵”

「ダイエット薬」として有名になったマンジャロですが、実際にはPCOSのような代謝性・内分泌疾患にも幅広い応用が可能です。
特に、「何をしても体重が落ちない」「月経が来ない」と悩んでいた方にとっては、人生を前向きに変えるきっかけになる可能性を秘めています。

「もしかして私も…?」と思われた方は、ぜひお気軽にご相談ください。


【参考文献・エビデンス】

  • A. Rashid et al. Efficacy of Tirzepatide in Women with Obese PCOS: A Retrospective Study (2023)

  • Cohen R. et al. Off-label use of GLP-1 agonists in PCOS: a review, OB-GYN Clin N Am. (2024)

  • N. Perakakis et al. GIP/GLP-1 Receptor Co-agonists: Mechanistic Insights and Clinical Advances, Diabetologia (2023)

 

ひろつ内科クリニック受診予約はこちらから

https://wakumy.lyd.inc/clinic/hg08874

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